Theorema Egregium
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Theorema Egregium(ラテン語。音訳:テオーレーマ・エーグレギウム[注 1]。直訳:卓越した定理[注 2])はカール・フリードリヒ・ガウスにより証明された定理で、曲面のガウス曲率が曲面の内在的な量(リーマン計量)のみで書ける事を主張する。
出典
- ^ “Latin dictionaries”. 2023年5月19日閲覧。
- ^ 山下太郎. しっかりと学ぶ初級ラテン語. ベレ出版. pp. 9-13. ISBN 978-4860643669
- ^ a b “羅和辞典 改訂版 発音”. Japan knowledge. 2023年6月7日閲覧。
- ^ 谷栄一郎「ラテン語の発音と表記について」『奈良県立商科大学研究季報』第5巻第4号、1995年3月、27-34頁、CRID 1050282813785990912、ISSN 09159371、2024年2月6日閲覧。
- ^ “古典語初級(ラテン語)”. 東京大学. 2023年6月21日閲覧。
- ^ a b 水谷 智洋, ed (2009/3/25). 羅和辞典 <改訂版> LEXICON LATINO-JAPONICUM Editio Emendata. 研究社. ISBN 978-4767490250の「theorema」の項、「egregium」の項、および「egregius」の項
- ^ #小林77 p.92.
- ^ “幾何概論 II 講義ノート(2012 年度,井上尚夫)”. 熊本大学. 2023年5月19日閲覧。
- ^ “曲面に関連するシンプレクティック群の表現と 幾何学的不変量”. 東京大学. 2023年5月19日閲覧。
- ^ 安藤 直也 (熊本大学大学院自然科学研究科). “曲面の幾何学 —Hopf の定理およびその証明—”. p. 18. 2023年6月7日閲覧。
- ^ 武隈良一「19世紀前半における独仏の数学」『小樽商大人文研究』第17巻、小樽商科大学、1959年1月、4頁、CRID 1050001338412448128、hdl:10252/3504、ISSN 0482-458X。
- ^ Yin Li. “The Gauss-Bonnet-Chern Theorem on Riemannian Manifolds” (PDF). 2023年5月18日閲覧。
- ^ “Differential Geometry III, Term 2 (Section 10)”. Durham University. 2023年5月19日閲覧。
- ^ “Lectures 16-17: Gauss's Remarkable Theorem”. Alberta University. 2023年5月19日閲覧。
- ^ #Goettingen 12章、太字引用者
- ^ #Project Gutenberg 12章の下記の文章を重訳した。ただしtheorema egregiumの箇所(remarkable theoremの箇所)はラテン語から直接訳した。
Thus the formula of the preceding article leads of itself to the remarkable- THEOREM. If a curved surface is developed upon any other surface whatever, the measure of curvature in each point remains unchanged.
- ^ 論文名の和訳『曲面の一般的考察』は下記に従った:阿賀岡 芳夫. “リーマン多様体の等長埋め込み論外史”. 筑波大学. p. 3. 2023年5月20日閲覧。
- ^ a b #Carmo p.131.
- ^ a b c #Dajczer p.47.
注釈
- ^ 「¯」で長母音を「˘」で短母音を表すと「thĕōrēma ēgrĕgĭum」である[1]。ラテン語の発音は基本的には文字をそのまま読めば良い[2][3]。ただし「th」に関してはギリシア語の借入なので、古典ギリシア語と同様帯気音[tʰ]と発音するのが本来だが実際には[t]と発音する事も多かった[4]。よってTheorema Egregiumを音訳すると「テオーレーマ・エーグレギウム」となる。なお、Theoremaのアクセントは前から2番目の「e」のところ、Egregiumのアクセントは語頭の「E」の位置にある[3]。アクセントが強勢アクセントなのか高低アクセントなのかは未解決であるが強勢アクセントだったという説が有力である[5]。
- ^ a b c ラテン語で「Theorema」は「 1. 議論、問題、2. 定理、3. 意見、見解、4. 見ること、観察」という意味のギリシャ語源の中性名詞であり[6]、「egregium」は形容詞「egregius」が中性単数主格の名詞につくときの格変化で、意味は「1. すぐれた、卓越した 2. 名誉ある」である[6]。
- ^ より直訳に近いのは、「前項の公式はそれ自身が卓越した定理を導く」であるが、「定理」の部分が定理の表題を兼ねているので、この訳文にした。
- ^ ここでいうのは地図上の任意の二点間の距離を保つ地図が書けない、という事である。与えられた一点からの距離を保つ地図であれば実現可能で正距方位図法(リーマン多様体の言葉で言えば正規座標)がこれにあたる。
- ^ ガウス曲率は断面曲率に一致する(後述)ので、平面、および球面の断面曲率を直接計算する事でもこの事実を証明でき、この場合は証明にTheorema Egregiumを必要としない。ただし、ガウス曲率が断面曲率に等しいという知見自身はTheorema Egregiumにより得られたものである。
- ^ 一般のm次元リーマン多様体の場合は、正規直交基底の貼る平面と別の正規直交基底の貼る平面が同一であれば、これらの基底の定義する断面曲率は同一である。今は2次元のリーマン多様体Mを考えているので、この条件は常に満たされる。
- ^ a b 本定理でいる「内在的」の意味に注意する必要がある。実際、Mの内在的な量から直接計算されるからを求めるには、cを知らねばならず、積はcに依存して決まる。よってから求まる偶数次平均曲率やガウス曲率の平方等もcに依存して決まる量である。 本定理で言う「内在的」はcをfixしたとき、任意に埋め込み写像を取ると、fから定まる主曲率の積の集合(やそこから定まる偶数次平均曲率、、ガウス曲率の平方等)は、fがへの埋め込み写像である限り、fに依存しない、という意味である。
- ^ すなわちガウス曲率の自乗K2がMに内在的な量である。
- 1 Theorema Egregiumとは
- 2 Theorema Egregiumの概要
- 3 厳密な定式化
- 4 高次元の場合
- 5 文献
- 6 関連項目
驚異の定理(Theorema egregium)
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「ガウス曲率」の記事における「驚異の定理(Theorema egregium)」の解説
詳細は「驚異の定理」を参照 ガウスの驚異の定理(ラテン語:Theorema Egregium)は、曲面のガウス曲率が曲面自身の上の長さを測ることから決定することができることを述べた定理である。実際、第一基本形式(first fundamental form)の考え方の全体として理解され、第一基本形式とその一階と二階の偏微分として表される。同値なことであるが、R3 の中の曲面の第二基本形式(second fundamental form)の行列式はそのように表現することができる。この定理の注目すべき驚異の点は、R3 の中の曲面 S のガウス曲率の「定義」が、曲面の空間内の位置に依存しているにもかかわらず、最終的な結果であるガウス曲率自体は、周囲の空間を何ら参照することなしに、曲面の本質的な計量(英語版)(intrinsic metric)を決定することである。つまり、これは曲面自体が持っている本質的な性質である。特に、ガウス曲率は、曲面の等長な変形の下に不変である。 現代の微分幾何学において 曲面は 2次元微分可能多様体(differentiable manifold)であると、抽象的にみなす。曲面の古典論(英語版)(classical theory of surfaces)の観点からは、そのような抽象的な曲面は R3 へ埋め込まれ(embedded)、第一基本形式により与えられるリーマン計量を持っている。R3 の中に曲面 S が埋め込まれていることを想定する。局所等長性(local isometry)は、S ∩ U への制限が像の上において等長(isometry)となるような R3 の開領域微分同相写像 f: U → V である。従って、Theorema Egregium では次のように記述されている。 R3 に埋め込まれた滑らかな曲面のガウス曲率は、局所等長変換の下に不変である。 例えば、円筒形のガウス曲率は 0 であり、「捩れていない」(平坦である)チューブも同様である。一方、半径 R の球面は正の定数曲率 R−2 を持ち、平坦な平面が曲率 0 を持ち、これら 2つの曲面は局所的にさえ等長ではない。このように、球面の一部でさえ、平面表現(planar representation) は距離を混乱させてしまう。従って、いかなる地図の投影法も完全ではない。
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