馬の職業と交易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/25 20:33 UTC 版)
中世の優れた騎手(horseman)とは騎士(knight)であった。通常、中上流階級出身である騎士は、幼少期から戦闘技術と馬の管理を仕込まれた。horseman を表すフランス語の「シュヴァリエ(chevalier)」、スペイン語の「カバレロ(caballero)」、ドイツ語の「リッター(Ritter)」と、多くの言語で騎士を表す用語は騎手としての立場を反映している。英語でも馬の達人を表すフランス語「シュヴァリエ」は、騎士階級の最高概念、「騎士道(chivalry)」にその名を伝えた。 馬の適切な管理と世話を確保するために多くの職業と地位が生まれた。貴族の家中において、マーシャル(marshal、厩役)は旅行の物流だけではなく軍馬から荷馬に至るすべての馬の世話と管理を行ない、馬に関連するあらゆる局面に責任を負った。宮廷内におけるマーシャル(文字通り「馬の召使("horse servant")」)の地位は高く、(イングランドのアール・マーシャル(Earl Marshal、軍務伯)のような)国王のマーシャルは多くの軍事問題についての管理責任も負っていた。「元帥」「将官」、「式部官」「(儀式や競技会などの)進行係」、米国「連邦保安官」「警察署長」「消防署長」等に訳される現代英語マーシャル(marshal)のゲルマン語の語源は「馬」を意味する *marhaz (英語の「牝馬」 "mare" の起源と関連する) + 「召使」 *skalkaz の組み合わせで「馬の召使」、すなわち「厩番」「厩役」を意味する。このゲルマン語から派生したフランク語 *marahskalk は、中世の戦争における騎兵の重要性を反映して王室の高官、さらには高位の軍司令官を表すようになった。*marahskalk は中世初期に北フランスがフランク王国に支配されると "mareschal" として古フランス語に借用され、のちにノルマン人が11世紀にイングランドでフランス語を話す官吏階級を確立した際にイギリスへもたらされた。貴族の家中には、家中の警備や秩序の維持を担当して軍の構成要素の指揮を行ない、マーシャルとともにハスティルデそのほかの騎士道的行事を運営したとみられるコンスタブル(constable、厩長)(または「厩舎伯("count of the stable")」)も存在した。下層社会では「マーシャル」が装蹄師の役を務めた。高い技量を有するマーシャルが蹄鉄を製作して装着し、蹄の世話を行ない、一般的な獣医医療を馬に施した。中世を通してマーシャルと、仕事の範囲がより限定される鍛冶職人とは区別された。 多くの商人が馬の供給に携わった。馬喰(ばくろう、horse dealer)(イングランドではしばしば「馬狩り( "horse courser")」と呼ばれた)は馬を売り買いし、盗まれた馬の取引に積極的に手を染める不正な人物として悪名が高かった。「ハクニーマン("hackneyman"、貸し馬車屋)」などのほかの人々は、貸し馬を提供して往来の多い道で大所帯を数多く形成し、盗難防止のため馬にしばしば焼き印を施した。
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