荷馬とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 生物 > > > 荷馬の意味・解説 

に‐うま【荷馬】

読み方:にうま

荷物を運ぶ馬。荷負い馬駄馬


駄賃馬稼

(荷馬 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/20 10:25 UTC 版)

馬による人の輸送(右)

駄賃馬稼(だちんうまかせぎ)とは、近代以前の日本においての背中に貨物や人を乗せて輸送に従事する職業のこと。この職業に従事する人を馬借(ばしゃく)あるいは馬子(まご)、使用された馬を駄馬(だば)あるいは稼馬(かせぎうま)・荷馬(にうま)、輸送料金を駄賃(だちん)と称した。

歴史

日本では古くから馬は重要な輸送手段であった。壬申の乱で挙兵した大海人皇子が菟田評家において、伊勢国から大津京に向けて米を運ぶ馬50頭を連れた行列に出会った皇子は、その荷を下ろさせて馬を軍馬として徴発した。これは当時の政権が大規模な輸送を行う能力を持っていたことを裏付けている(この徴発によって反乱軍を率いる皇子側は軍馬を確保するとともに、結果的には敵の本拠である大津京への兵糧搬入を妨害したことにもなった)。

律令制においては、国司郡司富豪などの地方の有力者の馬を駄賃と引換に徴発して年貢に運ばせるのが主であったが、やがて東国においては、これらの荷の運搬と安全を請け負う僦馬(しゅうめ)と呼ばれる職業的に輸送に従事する集団が現れた。後に他の地域でも農閑期の農耕馬の活用のために輸送に従事した農民などが輸送を専業としていく例が増加することになる。

鎌倉時代に入ると、畿内においても商業の活発化により馬借と呼ばれる輸送集団が現れるようになり、室町時代には大和国八木(現在の奈良県橿原市)に馬借のが形成されたほか、各地に同様の職業が広まっていった。戦国時代には戦国大名が自らの輸送・通信手段を確保するために、輸送業者に対して伝馬小荷駄などの義務を課して、それと引換に駄賃馬稼の許可を与えるようになった。

藤枝宿での積荷の載せ替え

江戸時代に入ると、江戸幕府(幕府においては慶長7年(1602年)と正徳元年(1711年))や諸藩が公定駄賃を定めて悪質な業者の排除に乗り出した他、近隣の業者が連携して輸送の効率化を図った。

明治時代に入っても、依然として馬による輸送が重視されて「陸運会社」の結成が新政府によって奨励されたが、やがて鉄道の整備に伴って衰微の道をたどってゆくことになった。

明治期の状況に関しては、イザベラ・バードの記録『日本奥地紀行』に女馬子に関する記述が見られ、山路が酷くて馬が数回滑って倒れたことを挙げ、日本政府に対して、「イギリスから装甲軍艦を買って国を疲弊させるより立派な道路を作る方が物流の観点から富国につながるだろう」とする旨の記述がある[1]

軍隊での兵站輸送の手段としては第二次世界大戦まで世界各国で残っており、第二次世界大戦で馬による兵站輸送を行わなかったのはアメリカ軍ぐらいしかない。

備考

駄馬

近代以前において馬は最も重要な輸送手段であったから、優れた馬(駿馬)は軍事や行政用として用いられるのが常であり、輸送に用いられた駄馬は人を乗せて早く走らせることの出来ない質の良くない馬であった。このため、転じて質の悪い下等の馬の事を一般に「駄馬」と呼ぶようになった。

駄賃

その昔、馬子が離れた町の問屋などの依頼によって輸送をする荷物を依頼主のもとまで取りに行く際に、途中において他者の荷物の輸送を引き受けて駄賃を受けることによって小銭を稼ぐことがしばしば行われた。このため、転じて子供の買い物など簡単な雑用と引換に貰う小銭のことを「(お)駄賃」と呼ぶようになった。

馬子

この職業の担い手は決して身分の高い人ではなく、仕事を行う際の服装も綺麗でなかった。これから転じて"どんなに低身分な人でも身なりを整えればきれいに見えるものだ"、"見た目が良いからといっても中身がそれに伴ってるとは限らない"という意味で「馬子にも衣装」という諺が現代にも残っている。ただ、現代には駄賃馬稼の職業はまず存在しないため、馬子を同じ読みの漢字に置換えた「孫にも衣装」と勘違いしている人がいるが、これは存在しない諺で全くの誤り。類句としては「猿にも衣装」。対句としては「公卿にもつづれ」

脚注

出典

  1. ^ 武部健一『道路の日本史 古代駅路から高速道路へ』中央公論新社、2015年5月25日、156-157頁。ISBN 978-4-12-102321-6 

関連項目


「荷馬」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



荷馬と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「荷馬」の関連用語

1
荷負い馬 デジタル大辞泉
100% |||||


3
駄賃馬 デジタル大辞泉
92% |||||

4
荷鞍 デジタル大辞泉
76% |||||

5
駄馬 デジタル大辞泉
76% |||||


7
仕合吉 デジタル大辞泉
58% |||||



10
52% |||||

荷馬のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



荷馬のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの駄賃馬稼 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS