非定常場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/13 01:12 UTC 版)
鋭利な後縁を伴う翼体が一定の迎角をもって空気中を動くときを考える。動き出した瞬間は翼体下面の前縁近くと上面の後縁近くによどみ点が現れる(円筒の場合と同様である。動き出した直後は翼体前側では高圧、後ろ側は低圧となる)。この翼上面にある後方よどみ点へ翼下面を通った空気が到達するには、後縁を回り込みさらに上面を後縁から前方へと移動することとなる。後縁で渦状の流れが生じ、不連続形状かそれに近い(曲率が極端に大きい)後縁部では局所的な高速領域が生じ、これは強烈な粘性力をもたらし後縁周囲の空気に作用する。そして強い渦が後縁近傍の翼体上面に蓄積する。 翼体が移動するにつれてこの渦は翼上面を滑りながら後方に取り残される。この渦は出発渦とよばれる。かつての先駆的な研究者らは液体中の出発渦を写真に収めることで出発渦の存在を確認した。 ケルビンの循環保存則にしたがうと、出発渦の渦度は翼体表面の循環と均衡する。:§ 2.14 出発渦の渦度(循環/旋回量)が増加するとき、翼周りの循環も増加し、翼上面の速度は上昇する。その後、翼の移動するにつれ出発渦は取り残され、翼が移動を開始した地点にとどまり旋回し続ける。これらの過程を通じて、後方よどみ点は翼上面から後縁へ移っていく。:§§ 6.2, 6.3 ((現実の気体の場合は出発渦はやがて粘性の作用によって消えていく)。 翼が移動を続けるとき、後方よどみ点は後縁部にあり、翼上側の流れは翼上面に沿う。翼の上面と下面を流れる流体は後縁で合流し、翼から離れた後は互いに平行に流れていく。この状態がクッタ条件である。:§ 4.8 一定の迎角で翼が動き、出発渦が放出されてあり、クッタ条件が現れており、翼周りには相応の強度の循環があるとき、その翼は揚力を発生させていて、その揚力の強度はクッタジョーコフスキー定理で見積もられる。:§ 4.5 クッタ条件により導かれる帰結のひとつは、翼体の上側を通る流体が下側のより高速であること。よどみ点へ向かう流体塊は翼上側を通る流体と下側を通る流体とに分かれる。上面の方が早く流れて先に後縁へ到達するため、前縁側よどみ点で上下に別れた流体はその後互いに出会うことはない。翼の後流の翼よりはるかに離る位置を考慮してもそうであり、「cleavage」と呼ばれる。前方よどみ点で上下に分かれた流体塊が翼後縁で出会って一体に戻るという同着説と呼ばれる誤った説明があるが、これはクッタが発見した「cleavage」という実現象と合わない。 翼の移動中に速度や迎角が変化すると、後縁の上下のどちらかで新たに微弱な出発渦が生成される。この微弱な出発渦によって、変化後の速度と迎角に対応するクッタ条件が再度現れる。結果として相応の循環と揚力が現れる。:§ 4.7-4.9 クッタ条件は、なぜ翼の後縁が(構造や製造の観点からはこのましくないにもかかわらず)尖っていなければならいかという観点におけるひとつの洞察となる。 渦無し、非粘性、非圧縮、 ポテンシャルの翼周り流れにおいて、クッタ条件は翼表面流れ関数を計算することで実践されることがある。 同様の手法は孤立した翼の2次元亜音速(非臨界)非粘性定常圧縮性流れにおいても適用される。 近年、粘性ありのためのクッタ条件の補正も研究されている。
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非定常場
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流速がゼロから増速する状況を実験観測すると、後側よどみ点が迎角正の場合の翼体上面に現れ、加速するにつれて後端へと移動していく。この初期の過渡的効果がひとたび消え去れば、クッタ条件が要請するとおりに、よどみ点は後縁にとどまりつづける。
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