酸化的発酵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/14 15:30 UTC 版)
人類の歴史の大部分において、酢酸は酢の形でアセトバクター属 (Acetobacter) の細菌によって作られてきた。充分な量の酸素がある環境、すなわち好気的な条件において、それらのバクテリアはエタノールを含有する様々な食品から食酢(以下「酢」とのみ表記)を作り出す。普通に使われるのはリンゴ酒、ワイン、発酵させた穀物、麦芽、米、すりつぶしたジャガイモである。バクテリアによって促進される化学反応は、全体として以下のようなものである。 C 2 H 5 OH + O 2 ⟶ CH 3 COOH + H 2 O {\displaystyle {\ce {C2H5OH + O2 -> CH3COOH + H2O}}} すなわちエタノールが持つ水酸基の酸化を行っているのである。アセトバクター属を接種して保温すると、空気に触れている部分が数か月後に酢になる。工業的な酢の製造過程では、酸素を供給することによってバクテリアによる酸化を促進する。 発酵によって酢が初めて作られたのは、おそらくワインの製造の失敗によるものである。 発酵中のブドウ果汁(ムスト)の熟成時に温度が高すぎると、アセトバクター属が自然にブドウに付着している酵母を圧倒してしまう。料理、医療、保健衛生における酢の需要が増すと、ワイン製造者たちはすぐに、ブドウが熟してワインの製造に適するようになる前の暑い夏季に他の有機物を使って酢を作ることを学んだ。しかし、ワイン製造者たちは発酵の過程を理解していなかったため、その方法は時間がかかる上にいつも成功するとは限らなかった。 最初の近代的な工業的生産過程の1つは「促成法」あるいは「ジャーマン法」と呼ばれるもので、1823年にドイツで使われ始めた。この方法では、発酵は木の削り屑や炭を詰めた塔の中で行われる。エタノールを含んだ原料が塔の頂上から流し込まれ、新鮮な空気を自然に、または人為的な対流によって供給する。空気の供給量を増やすことによって、数ヶ月かかった酢の製造は数週間に短縮された。 今日における酢の製造には1949年にオットー・ホロマツカとハインリヒ・エプナーによって考案された浸水形の培養槽が用いられている。この方法では、発酵は撹拌されるタンクの中で溶液に酸素を通じさせながら行われ、15%の酢酸を含んだ酢が24時間で、流加培養法を使うと20%の濃度のものが60時間ででき上がる。
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