軍艦の無害通航
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 07:16 UTC 版)
すでに述べたように軍艦に無害通航権が認められるかどうかについて明文化した条約はなく、この点については異なる複数の解釈が存在する。1958年の国連海洋法会議ではこの点について合意に至ることができず、領海条約第23条に規則違反の軍艦に対する退去要請権が定められたことを除き、軍艦の無害通航権に関する規定を採択することはできなかった。1973年から1982年にかけての第3次国連海洋法会議においても意見の一致は見られず、同会議において採択された国連海洋法条約では無害性の基準について船種基準とするのか行為基準とするのか解釈上の問題が残る規定が採択された(#無害の基準参照)。その結果、軍艦の無害通航権を認める国(アメリカ、イギリス、オランダ、日本)、事前に通告することを求める国(エジプト)、事前の許可を求める国(ルーマニア、スーダン、オマーン)と、各国の立場が分かれることとなった。1989年にはアメリカとソ連が「無害通航の統一解釈」という共同声明を発し、「軍艦を含むすべての船舶は、積荷、軍備、推進方法にかかわりなく、国際法にしたがって領海の無害通航権を有し、事前の通告ないし許可を必要としない」という立場を示した(その前年1988年に黒海で米ソ艦船の衝突事件が起きていた)。このように軍艦の無害通航権の有無については意見の一致が見られないものの、国連海洋法条約では領海条約第23条を引き継ぎ国際法や沿岸国の法令に従わない軍艦に対して沿岸国が退去要求をできると定められたほか(第30条)、軍艦の違法行為の結果として沿岸国に与えた損失に対して旗国(船舶が所属する国)が国際責任を負うと定められた(第31条)。
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