無害の基準
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/27 07:16 UTC 版)
イギリス軍艦のアルバニア領海航行が問題とされた1949年のコルフ海峡事件国際司法裁判所判決では、裁判所は軍艦の戦闘形態の有無や通行目的に着目してイギリスの軍艦の航行がアルバニアに害をなすものではなかったという判断がなされた。1958年の領海条約第14条第4項では、「沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない」通行は「無害」であると定められた。しかしここでは外国船舶の領海通過が無害かどうかを判断するにあたって特定の基準が示されておらず、条文の解釈により異なる基準が適用される余地が残され異なる立場が対立することとなった。このうち行為基準説の立場では、例えば軍事演習、防衛情報の収集、資源の調査など、外国船舶が領海内でどのような行為をするかを尺度として判断する。これに対し船種基準説の立場によれば、船舶が軍艦や原子力船など、船舶の種類や性質を基準に無害かどうかを判断する。1982年の国連海洋法条約では、第19条第1項で領海条約第14条第4項の無害に関する抽象的な定義を踏襲しながら、第19条第2項で無害ではない活動を具体的に列挙した。第19条第2項は、行為基準によって無害性を判断する場合の具体的内容を明らかにしたものと言える。しかしこうした国連海洋法条約の文言からは、確かに船種基準説が一般的な規則として成立していると判断することはできないが、逆に船種基準説にもとづく沿岸国の船種別規制が禁止されているとも条文の文言上は判断できず、第19条第1項は行為基準以外の基準をも含む余地を残しているため、今なお解釈上の問題は残る。実際に軍艦の領海内通航に関して事前許可制を採用している国も多い。
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