貨幣の発行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 10:19 UTC 版)
貨幣発行の利益 貨幣発行益は、古くから政府や造幣者に注目されてきた。発行した貨幣を用いて財や労働を調達できるほか、貨幣の普及により税の徴収が楽になるという利点がある。また、地金の値段よりも額面が高い貨幣を作れば、差額によってさらに利益は大きい。多くの国家で大量の貨幣が発行され、ペルシアのアケメネス朝やローマ帝国をはじめ古代から兵士への支払いに硬貨が多用された。貨幣発行益を得るための造幣は、貨幣や政府への信用に影響する。日本の朝廷が発行した皇朝十二銭は、改鋳のたびに目方と質が低下した新貨が出たため、信用の低下と銭離れにつながった。現代は中央銀行が銀行券を発行する国家が多く、その場合は製造コストと額面の差額は貨幣発行益とはならない。発行益の大きい貨幣が存在すると、贋金の増加にもつながった。 貨幣発行の権利 貨幣を発行する造幣権は政府や領主に管理され、民間が発行する貨幣の多くは私鋳と呼ばれて取り締まられた。例外として漢の劉邦は楚との戦争時に民間の造幣を許可し、半両銭が普及する後押しとなった。またアメリカ合衆国では、個人や団体が自由に銀行を設立して銀行券を発行できる自由銀行時代もあった。 緊急時においては短期間で地域通貨が発行され、泉州での飢饉の際の私鋳銭、銅不足によって作られたアーマダバードの鉄貨、世界恐慌が起きたあとのワシントン州の木片などがある。歴史的には、さまざまな銀行が銀行券を発行できたが、現在では中央銀行が銀行券の発行を独占している国が多い。仮想通貨のビットコインでは発行者はマイナー(採掘者)と呼ばれ、作成報酬や取引手数料を受け取る。 鉱業 金属貨幣の発行には大量の金属を必要とした。有名な産地として、アテナイのラウリオン、ペルーのポトシ、日本の石見銀山、ブラジルのミナスジェライス、ゴールドラッシュが起きたカリフォルニアなどがある。鉱山での過酷な採掘も記録に残っており、ラウリオン銀山は古代ギリシャの奴隷労働としてもっとも過酷と言われた。ポトシ銀山はペルー副王領の時代にインディオが酷使され、多数が命を落とした。 アテナイのラウリオン鉱山の選別台の跡 日本の富本銭と鋳棹(複製品、貨幣博物館) ビットコインのマイニング機材の一例。GPUを使用している
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