誤認混同に対する論議
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/21 00:40 UTC 版)
正露丸の主薬として用いられている「木クレオソート(日局木クレオソート)」は、古くはクレオソートの名称で知られ、日本薬局方の初版から収載されていたが、第十五改正第一追補より、木クレオソートを正式名称とし、クレオソートは別名となった。また、第十五改正第二追補において、製法・成分の異なる石炭由来で多環芳香族炭化水素であるベンツピレンなどの発癌性物質を含有するクレオソート油と区別された。現在では、「日局」をつけて「日局木クレオソート」と呼ばれている。 このように名称が分けられた原因としては、過去のクレオソートに関する論争がある。 雑誌週刊金曜日連載の商品の安全性に関するコラムをまとめたブックレット「買ってはいけない(1999年刊行)」の中で、木クレオソートとクレオソート油を混同したまま「枕木や電柱に使われる防腐剤を医薬品に用いるのか」と工業用クレオソート油のもつ毒性で正露丸に対する中傷が行われた。 これに対して名指しで批判された代表的な正露丸メーカーである大幸薬品は、正露丸に使われる木クレオソートと防腐剤などに使われる工業用クレオソートが根本的に違うことを示し、内容の訂正と出版された本の回収を求める事態となった。 この指摘に対して週刊金曜日上において、以下の内容の訂正記事が掲載された。 正露丸を「漢方薬」としましたが、漢方薬の成分である生薬は使われているものの、厳密には「漢方薬」ではありません。 漢方薬を「生薬」に変え、構成や見出しなども訂正させていただきます。 正露丸に使われているクレオソートはコールタールを原料とする日本工業規格クレオソート油ではなく、 プナの木などから得られる乾留物を精製・蒸留して作る日本薬局方クレオソートでした。 おわびして訂正いたします。(「回答企業にお応えします」より) しかし三好基晴は、「木クレオソートだから安全とも言えません」と全面的な撤回はせず、その後に発行された第16刷でも「植物性だからといって安全とは言えない。クレオソートは劇薬である」と主張。 木クレオソートと判明した後も、それがなお危険だとする論点は以下のとおりである。 化学混合物としてのクレオソート自体と主成分中最多の化合物であるグアヤコールは、医薬品服用量において劇薬指定されている。 消毒薬として広く用いられたフェノール、クレゾールとグアヤコールは皮膚に障害を与える毒性が知られている。 その他のキシレノールなどのフェノール類成分も人体に対して強い毒性・有害性を有するものが多い。 これらの主張に対して大幸薬品ではウェブサイトにおいて、日局木クレオソートが下痢症状に対して実際に作用するメカニズムや、発がん性がないこと、他に有名な止瀉薬の成分であるロペラミドと比較した場合の優位性を掲載している。 主成分である日局木クレオソート(木クレオソート)は、医療用医薬品としては歯科領域における鎮痛鎮静や根管の消毒用としてのみ許可されている。一方、一般用医薬品としては、下痢、消化不良による下痢、食あたり、はき下し、水あたり、くだり腹、軟便の効能が許可されている。木クレオソートは一般用医薬品として使用する場合の服用量では、殺菌作用ではなく腸内の過剰な水分分泌を抑制することと大腸の過剰な運動を正常化させることが明らかになってきている。
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