触媒、試薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 22:44 UTC 版)
サマリウムおよびその化合物のもう一つの重要な用途は触媒および試薬である。サマリウム触媒はポリ塩化ビフェニル (PCBs) のような汚染物質を脱塩素化して分解したり、エタノールの脱水および脱水素化反応を促進したりする。トリフルオロメタンスルホナトサマリウム (Sm(CF3SO3)3, (Sm(OTf)3) はハロゲンを促進剤とするアルケンのフリーデル・クラフツ反応において最も効果的なルイス酸触媒の一つである。 サマリウムにヨウ素を作用させて得られるヨウ化サマリウム(II) (SmI2) は一般的な還元剤として用いられる。例えば脱スルホニル反応(英語版)のような有機合成におけるカップリング試薬や環化反応、ダニシェフスキー、桑島(英語版)、向山(英語版)、ホルトンなどによるタキソール全合成、ストリキニーネ全合成(英語版)、バルビエ反応、モリブデン触媒を用いたアンモニア合成、その他ヨウ化サマリウム(II)による還元反応(英語版)などが挙げられる。 通常、酸化物の形でサマリウムは赤外線の吸収を増加させるために陶器やガラスに添加される。また、ミッシュメタルの非主要な構成元素として、ライターやトーチランプを点火するための火打石に用いられる。その他、酸化サマリウムから作られるセラミックス材料は電子材料としてコンデンサーや誘電体に用いられるほか、自動車の排気ガス浄化用等、触媒の材料としても注目されている。 放射性同位体の153Smは46.3時間の半減期でベータ粒子を放出するβ放射体である。それは肺癌、前立腺癌、乳癌および骨肉腫において癌細胞を殺すのに用いられる。この目的のため、153Smはエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸 (EDTMP) とキレート錯体を形成させて静脈注射される。153Smをキレート化することによって、放射性サマリウムが体内に蓄積して過剰に被曝することで新たな癌細胞が発生するのを防ぐことができる。対応する薬は、サマリウム (153Sm) レキシドロナム(英語版)およびその登録商標であるクアドラメットを含む複数の名称を有している。 149Smは中性子捕獲によって41,000 バーンという高い衝突断面積を有しているため、原子炉の制御棒に用いられる。ホウ素やカドミウムといった他の競合する材料に対する利点は、149Smの核融合および核崩壊生成物の大部分が良好な中性子吸収材であるサマリウムの他の同位体であり、中性子の吸収が安定しているという点にある。例えば151Smの衝突断面積は15,000 バーン、150Sm、152Smおよび153Smの衝突断面積は3桁オーダーであり、各同位体の混合物である自然中のサマリウムの衝突断面積は6,800 バーンである。原子炉中の崩壊生成物である149Smは原子炉の設計と運用において135Xeに次いで2番目に重要であると考えられている。
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