解禁の経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 05:24 UTC 版)
「私設取引システム運営業務」の記事における「解禁の経緯」の解説
(取引所集中義務の撤廃) 「取引所集中義務の撤廃」が、私設取引システム運営業務を解禁する前提となった。 1996年11月、橋本総理(当時)は、規制緩和策「我が国金融システムの改革~2001年東京市場の再生に向けて」の検討を指示した。金融関係5審議会が、Free(市場原理が働く自由な市場に)、Fair(透明で信頼できる市場に)、Global(国際的で時代を先取りする市場に)の3つを原則とする市場改革の具体策について検討し、うち翌1997年6月の証券取引審議会報告書「証券市場の総合的改革について」において、1998年度までに「取引所取引の改善と取引所集中原則の撤廃」を行う旨が記載された。報告書には「取引所集中義務を撤廃し、上場銘柄の取引所外取引を認める」とだけ書かれたが、前提となった市場ワーキング・パーティー報告書「信頼できる効率的な取引の枠組み」では、 取引所集中義務が撤廃されれば、今後、証券会社及び投資家等による私設取引システム(…)の開設が予想される。 新たな取引システムが、取引所と同程度の高い価格形成機能を有したものとなれば、そのようなシステムは、当然、取引所としての規制を受ける必要があろう。しかしながら、当面、このようなシステムでは、基本的に取引所の価格形成機能を活用し、取引所と同程度の高い価格形成機能は有しないと考えられるので、取引所ではなく、証券業として整理することが適当となる。 そのような手当てが講じられたものについては、証券取引法上において開設を禁止している「有価証券市場に類似する施設」には該当しないとの立場を法律上明確にすることが適当である。 などと、私設取引システム運営業務の枠組みについての説明が行われた。もともと1948年証券取引法は、「取引態様の事前明示義務」、「向い呑みの禁止」、「呑行為の禁止」を定めていた。1998年金融システム改革法は、これに「取引所有価証券市場外での取引の禁止」を追加したが、同時に、この取引所取引原則が「原則」であって、「取引所集中義務の撤廃」は、証券取引所の定款の変更により可能であることが明示された。その上で、証券会社が行う証券業務の1つとして、私設取引システム運営業務が解禁された。 (2000年12月指針) こうして1998年12月に解禁された私設取引システム(PTS)運営業務だが、「高い価格形成機能を持つ方法によって行われるものでないこと」という制約があって、売買価格の決定方法が市場価格売買方式(クロッシング)と顧客間交渉方式(ネゴシエーション)の2つに制限された。そのため、米国のECN(電子証券取引ネットワーク)のような仕組みが容認されず、また、取引システムを使用して行う注文の付け合わせが規制されないという不均衡も生じた。そのため、金融庁は2000年11月に「私設取引システム(PTS)開設等に係る指針」を公表し、定義府令と事務ガイドラインを改正して、翌12月から売買価格の決定方法に、顧客注文対当方式(オーダードリブン)と売買気配提示方式(クオートドリブンかつマルチディーラー)を追加する一方、不公正取引を防止するため、株式PTSについて価格情報の外部公表を義務づけた。また、取引量に係る数量基準が設けられた。 (証券会社の最良執行義務) その後の2004年6月改正法(2005年4月施行)で、市場間競争の制度的な枠組みの前提として、証券会社に最良執行義務が課せられた。「向い呑みの禁止」、「呑行為の禁止」、「取引所有価証券市場外での取引の禁止」などの条項は、「最良執行義務」に係る規定として整理されたが、このとき同時に、証券取引所とPTSの競争条件のイコールフッティングを目的として、売買価格の決定方法に競売買方式(オークション)が追加された。
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