要旨2
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 02:30 UTC 版)
要旨2については、同項の定める保護処分取消制度には、実務レベルで2種類の見解が拮抗していた。一方は、保護処分取消制度を刑事事件の再審と同様に捉え、誤った保護処分(有罪判決)を取消すとともに改めて不処分決定(無罪判決)すべきとする見解。もう一方は、再審とは異なり、誤った保護処分は勾留取消(刑訴法第87条)のように「将来に向かって」処分の効力を失わせれば足りるとする見解である。しかし、同項は保護処分取消しのなし得る場合を「保護処分の継続中」と限定している点からも、取消制度を再審と同一視する前者の見解には疑問が残る。そのため、本決定は後者の見解を採用することで、要旨1における取消制度の「再審的」運用を補強している。 このため、本決定に基づけば保護処分取消しは「撤回」と見做される。その一方で、「将来に向かって保護処分から解放する」との本決定判示は取消決定の一事不再理効を承認する趣旨に過ぎず、また取消しの遡及効と保護処分の継続は本質的に連動する概念ではないため、本決定は前者の見解を否定まではしていない、とする見解もある。また、少年法第46条の定める保護処分決定の一事不再理効は、同条但書によって「同法第27条の2第1項により処分を取消した場合」をその例外としている。この但書は、保護処分取消しの効力が処分決定時にまで遡及するからこそ、再審判や新たな刑事訴追が可能となることを意味しているのであって、本決定はこの但書と矛盾している、との批判もある。 一方これによって、処分終了後や不処分・審判不開始決定に対しても同項を類推して保護処分取消しを求めようとする一部の見解も、少なくとも非行事実の不存在を理由とする場合には、否定されることとなった(下表参照)。また、「非行事実の不存在が明らかにされた少年を〔中略〕保護処分から解放する手続き」との表現から、本決定は要保護性の不存在については処分取消事由とせず、非行事実の一部誤認についても、その不存在部分を除外すればまったく処分が下されなかったであろう場合以外には取消事由としない、という通説を踏襲するものである(本決定は非行事実の不存在のみを争う事例のため、要保護性の不存在については射程範囲外である、とする見解もある)。 その他形式的な論点として、非行事実の不存在を理由とする保護処分取消決定の体裁は、処分を取消すに留まるものと、改めて不処分決定をなすものの2種類が存在する。本決定は「保護処分から解放する」との表現から、不処分決定までは必要としないと述べていると思われる。また上記のように、同法第27条の2第1項に基づく処分取消しは一事不再理効の例外とされているため、非行事実の不存在を理由として保護処分が取消された少年に対し、同一事実について検察官が後日公訴を提起するということも、理論上は許されると言える。
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