要因として考えられるもの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 03:41 UTC 版)
「クワシオルコル」の記事における「要因として考えられるもの」の解説
クワシオルコルの発症要因にはさまざまな解説があり、いまだ議論が続けられている。タンパク質の欠乏と同時にカロリーや微量栄養素も不足することで発症するということは既に認められているが、発症の主たる要素ではないかもしれない。鉄、葉酸、ヨウ素、セレン、ビタミンCなどの栄養素、とりわけ抗酸化にかかわるもののうちのひとつが欠乏することが病態に影響すると考えられる。生体内で重要な抗酸化物質のうちクワシオルコルの患児で減少しているものには、グルタチオン、アルブミン、ビタミンE、多不飽和脂肪酸(ポリエン脂肪酸)などがある。したがって、基本的な栄養素ないし抗酸化物質が不足している小児が病気や毒物などの外的ストレスにさらされると、クワシオルコルにかかる可能性が高くなる。 栄養についての知識が不足していることも要因のひとつとなりうる。コーネル大学の国際栄養プログラムの主導教授、マイケル・ラザム(Michael Latham)博士が示した例には、子供にキャッサバを食べさせていた親たちで、クワシオルコルによる浮腫のために子供が栄養失調であることを認められず、食餌中にタンパク質が足りないにもかかわらず栄養がじゅうぶん行き届いていると主張していたものがある。 クワシオルコルの発症の重要な要因のひとつに、アフラトキシンによる中毒がある。アフラトキシンはカビ毒の一種で、カビの生えた食べ物を摂ると一緒に摂取され、肝臓のチトクロムP450によって代謝を受けエポキシ化されて、肝細胞のDNAを損傷する。血清タンパクの多く、とりわけアルブミンは肝臓で産生されるため、クワシオルコルの症状はこれで容易に説明できる。クワシオルコルの大部分がカビの生育に向いた温暖で湿潤な気候の地域で発生していることや、乾燥した地域では栄養失調に関する疾患といえばマラスムスのほうが頻度が高いことは注目すべきであろう。そうすると、患者を治療するうえで「タンパク質は同化作用のみを目的として補給するべきであり、異化作用に対しては炭水化物と脂肪とで賄うべきである」という結論に至ることができる。タンパク質の異化経路には肝臓で行われる尿素回路が含まれるが、既に損傷している肝臓にタンパクを補給すると、尿素回路が機能しきれずに肝機能が破綻し、肝不全を引き起こして死に至ることもありうるからである。 栄養失調による疾患には、ほかにマラスムスや悪液質(カヘキシー)がある。後者は原因となる疾病があることが多い。
※この「要因として考えられるもの」の解説は、「クワシオルコル」の解説の一部です。
「要因として考えられるもの」を含む「クワシオルコル」の記事については、「クワシオルコル」の概要を参照ください。
- 要因として考えられるもののページへのリンク