リアエントリー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/12 05:54 UTC 版)
フロントエントリーとは全く異なる構造のものとしてリアエントリー型が存在する。リアエントリー型は、シェルがフロントシェル(Front Shell)とリアシェル(Rear Shell)の2つに大きく前後に分かれる。リアシェルはふくらはぎからかかとにかけてのブーツ後方の部分となっており、そこが下部をヒンジとして大きく開く。ソールは全てフロントシェルに属している。リアエントリーのブーツでは、リアシェルを開いた状態でインナーブーツも後方が大きく開口していて、そこに足を入れ、リアシェルを閉じてふくらはぎのバックルで締める(リアシェルの内側にはインナーブーツの蓋がついているため、足に直接接する部分はインナーブーツである)が、製品によってはフロントシェルとリアシェルをワイヤで繋ぎ、リアシェルに取り付けたダイヤルでワイヤを巻いて締め付け、解放はボタンを押してワイヤを緩めるタイプもあった。フロントバックルやそのバリエーションのブーツでは、足はシェル全体の締め付けで固定される。それに対して、リアエントリーのブーツのバックルで締め付けられるのは、すねとふくらはぎのみとなる。スキー滑走では足全体がブーツに固定される必要があるので、リアエントリーブーツでは、固定用のプレートをシェルに内蔵し、足首はプレートを介してワイヤで締めつけてブーツに固定し、足の甲に対してはプレートをねじを用いて押しつけるように固定するものが多いが、過去にはシェルとインナーの間にエアバッグを内蔵し、シェルに取り付けたエアポンプで履いた後に空気を出し入れして調節する物もあった。リアエントリーは1980年代に席巻し、一時はトップスキーヤーまでもが用いるモデルが登場したが、1990年代になってその利用が衰退した。リアエントリーブーツは足首を曲げづらく、スキー技術において足首を使えないのは致命的であるためである。ただ、構造上、スキーヤーの足に細かくフィットした形状でないと不快感が出やすいフロントバックル型と異なり調整範囲が極めて広いことや、容易に脱着できること、爪先や甲が浸水してぬれることがないことから、初級スキーヤー向けのレンタル用品としては残り続けている。 一時的なリアエントリー型の爆発的普及の要因として考えられるのは、当初のフロントバックル型ブーツはシェルに取り付けられたバックルとバックル受けの位置が完全に固定され、そのために締め付け調節が限られた範囲でしか出来ず、体格差により、特にふくらはぎが太い人はバックルが全く届かなくて締め付ける事が出来ない場合があり、何とかバックルを締めたとしても極端な締め付けとなるために強烈な痛み・うっ血・内出血などの外傷を起こし、とても履いていられなくなるという致命的欠点を抱えており、逆にふくらはぎの太さに合わせるとくるぶしより下の足全体が緩くなってしまい、フォーミング(発泡樹脂をインナーブーツに充填して足の形に合わせるチューンナップ)等を行わなければならない事もある。その点、リアエントリー型は可動範囲が広い事でふくらはぎの太さの対応範囲にかなりの余裕があるのでふくらはぎが太い人を中心に好まれ、特にトップアスリートとなると必然的に脚全体の筋肉が発達してふくらはぎも太くなるため、その点でも好まれたという事である。その当時であっても、スキーショップによってはフロントバックル型ブーツのシェルに別穴を開けてバックルやバックル受けを付け直すケースも見られたが、シェルの強度の低下が懸念されるためにその後は勧められなくなった。なお、現在のフロントバックル型ブーツのシェルは、最初からふくらはぎのほぼあらゆる太さに対応出来るよう、あらかじめ専用の工具でバックルの取り外し・再取り付けをして位置調節が可能なビス穴がいくつか付けられた設計となっている物もあり、状況が改善している。
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