複合コアとウラン製ピット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/16 01:10 UTC 版)
「ピット (核兵器)」の記事における「複合コアとウラン製ピット」の解説
当時、プルトニウム239の供給量が減ってきていたため、プルトニウムの使用量をさらに減らすため複合コア("composite core")が開発された。これは、プルトニウムの中空ピットの周りをさらに高濃縮ウランの中空ピットで囲んだものであった。複合コアは1947年の終わり頃にMark 3に搭載された。例えば、Mark 4 の複合コアは 2.5 キログラムのプルトニウムと 5 キログラムのウランを用いた 49-LCC-C コアであった。爆発の際に放出されるエネルギーに寄与するのはプルトニウムの35%とウランの25%だけであり、効率はよくなかったが、プルトニウムの使用量を節約できるのは核兵器を量産する上でメリットが大きかった。 異なるピット素材を検討する要因となったのは、プルトニウムとウランの振る舞いの違いである。プルトニウムの核分裂反応は速く、しかも多数の中性子を生成するので効率がよいが、生産コストが高いうえに稼働可能なプルトニウム生産炉も限られていたことから大量に調達するのは難しかった。一方、ウランの核分裂反応は遅く、そのため臨界量も多かったが、核兵器の量産に堪えるだけの生産量が確保できた。複合コアの検討は遅くとも1945年7月には始まり、1946年には利用可能になった。ロスアラモス国立研究所は全ウラン製ピットの設計を優先して進めることになった。新型ピットはサンドストーン作戦で実験に供された。 核兵器の出力はピットの選択により制御することができる。例えば、Mark 4 は必要な出力に応じて次の3種類のピットを使い分けるようになっていた。 49-LTC-C ・・・ 浮上型ウラン235製ピット(1948年5月14日のサンドストーン作戦ゼブラ実験で使用) 49-LCC-C ・・・ 浮上型ウラン-プルトニウム複合コア 50-LCC-C ・・・ 浮上型複合コア この方法は、より現代的なピットが取り外せない核兵器において現場での核出力調整に使えるものではなかったが、あらかじめ戦術目的に応じた核出力を持つ複数のサブタイプを作り分けておくことができた。初期のアメリカ製核兵器では ピットのアセンブリがタイプC とタイプD に標準化されていた。Mark 4はどちらも使用でき、飛行中に手作業で組み込んでいた。Mark 5ではタイプD を使用して飛行中に自動で組み込めるようになった。Mark 5を弾頭化した W5 も同様であった。続くMark 6では同じピットを使うようになった。 ピットはプルトニウム239のみ、プルトニウム239とウラン235の複合材、ウラン235のみのいずれでも構成できる。プルトニウムが最も一般的な選択だが、イギリスの バイオレットクラブ(英語版)爆弾とオレンジヘラルド弾頭はそれぞれ87キログラムと117キログラム(資料によっては98キログラムと125キログラム)の高濃縮ウランで作った中空ピットを用いていた。グリーングラスコアも内部の直径560ミリメートル、厚さ3.6ミリメートル、重量70-86キログラムの高濃縮ウラン製の球殻で、周囲は天然ウランのタンパーで完全に覆われていた。こういった臨界量の何倍もの量の核分裂性物質を用いたピットは安全上のリスクが極めて大きく、たとえ爆縮が失敗して非対称になってもキロトン級の爆発を引き起こす恐れがある。純核分裂兵器で出力が最大のものは500キロトンを発揮するMark 18であり、中空ピットは60キログラムの高濃縮ウランでできていた。これは臨界量の4倍に相当し、アルミニウム-ホウ素合金の鎖をピットの中に入れることで安全化していた。
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