薬物代謝に影響する要因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 04:10 UTC 版)
ほとんどの脂溶性薬物の薬学的作用の持続時間と強度は、その薬物が不活性な生成物に代謝される速度によって決定される。その意味ではシトクロムP450システムが最も重要な経路であるといえる。一般に、何らかの要因で薬学的に活性な化合物の代謝速度が増加すると、薬物作用の持続時間と強度は減少する(例えば酵素誘導)。また逆の現象も起こる(例えば酵素阻害)。しかし、プロドラッグが薬物に変換される酵素反応においては、反応を司る酵素の誘導によってプロドラッグの変換が加速され、薬物の活性レベルが上昇する。一方で潜在的に毒性を示す可能性がある。様々な’’生理学的’’および’’病理学的’’要素が薬物代謝に影響する。生理学的要素には、年齢、個人差(たとえば、ゲノム薬理学)、腸肝循環、栄養、腸内細菌、性差などが含まれる。一般に薬物の代謝は、ヒトと動物において、胎児、新生児、高齢者は成人に比べて遅い。遺伝的多様性(多型)は、薬物の効果にある程度ばらつきが見られる原因として重要である。第2相のアセチル抱合に関与する、N-アセチル基転移酵素(またはN-アセチルトランスフェラーゼ)の例では、遺伝的要因によりヒトは、アセチル化が遅い体質と早い体質の集団に分かれる。集団の比率は人種によって異なる。 「イソニアジド#副作用」も参照 代謝が遅い体質の者は、用量依存性の毒性に対してより影響を受けやすいので、遺伝的多様性は、時として重篤な結果をもたらす。シトクロムP450酵素群に関しても個人差、人種間差があり、1から30パーセントの人に欠損が見られる。’’病理学的要因’’も肝臓、腎臓、心臓での薬物代謝に影響しうる。コンピュータ上でのモデル化やシミュレーションを用いて、ヒトへの臨床試験を行う前に、仮想の患者集団における薬物代謝反応が予見できる。この方法により、薬害反応にさらされる危険性が高い個人を特定することが可能である。
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