苦境からの戴冠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 06:53 UTC 版)
「ワグネリアン (競走馬)」の記事における「苦境からの戴冠」の解説
東京優駿(日本ダービー)は、毎年、東京競馬場芝2400メートル、初期状態から2段階外側に内ラチが設置されるCコースという条件で挙行される。当日は、主にフェブラリーステークスなどが行われる第1回開催に次ぐ、この年の第2回開催、東京優駿や優駿牝馬(オークス)のトライアル競走、NHKマイルカップやヴィクトリアマイル、優駿牝馬を経た12日目であった。開催が進むにつれて、使用された馬場は内側を中心を傷みが出るものだが、12日目は、Cコースを使用して2日目だった。そのため、馬場の内側はそれほど荒れておらず、12日目でもコースの内側を走る馬が有利とされていた。また、この時期は芝の生育が早いために高速決着となりやすく、外枠の馬が外を回り続けて、直線で内の馬を差し切ることは難しいとされていた。 福永は、ダービーに参戦するにあたり、その有利な内枠が得られると勝手に思い込んでいたという。そのため、枠順決定直前の木曜日午前中には、「内で脚をタメて、直線は馬のあいだを縫っていくような……」という内枠ありきの戦法を周囲に披露してしまっていた。しかし同じ日の夕方にスマートフォンで「8枠17番」が与えられたことを知り、この時点で「終わったな」と思ったという。それだけでなく、本命視されたダノンプレミアムが絶好枠、過去10年で5勝の1枠1番に、ブラストワンピースやキタノコマンドールも内枠を得たうえの大外枠。友道も「最悪」「目の前が真っ暗になった」と発言する抽選結果だった。1番人気に推されながら凡走した皐月賞に加え、不利な大外枠が嫌われて、評価は急落。当日は5番人気だった。 福永は、大外枠以外の勝利パターンはいくつか思い描いていたという。しかし大外枠に収まったことで用意したパターンのほぼすべてを捨て去ることになり、「折り合いがつかずに惨敗するリスクを冒しても先行すること」が考えうる唯一の勝利パターンであると結論に行きついていた。レースではスタートからその通りに先行し、一時折り合いを損なう危険があったが、コズミックフォースの背後に収まったことで落ち着きを取り戻すことに成功した。直線では、傾向通り逃げ・先行馬による先頭争いとなったが、正しく折り合って好位を追走、それに加えて世代屈指の末脚を持つワグネリアンがすべて退ける。東京優駿史上4番目に早い高速決着ながら、内枠有利外枠不利の傾向を覆す優勝だった。 85回の歴史の中で、8枠の優勝は、2001年「8枠18番」のジャングルポケット以来17年ぶり。17番の優勝は、1982年バンブーアトラス、1994年ナリタブライアン以来24年ぶり3勝目。3着以内に入っただけでも、2004年ハイアーゲームの3着(優勝馬:キングカメハメハ)以来。また2着は6枠12番のエポカドーロであり、枠番連勝式の「8-6」は、史上初めての組み合わせだった。さらに単勝5番人気馬の優勝は、1967年アサデンコウ以来51年ぶり3勝目。皐月賞で入着を逃した馬の巻き返し優勝は、2009年ロジユニヴァース(皐月賞14着)以来9年ぶり14例目だった。
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