船体の老朽化・環境破壊の懸念
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 14:58 UTC 版)
「セイファー」の記事における「船体の老朽化・環境破壊の懸念」の解説
2015年3月、同年に勃発したイエメン内戦の結果、セイファーが係留されている地点付近の海岸線を反政府武装勢力フーシ派が制圧。これに伴って、本船を含む施設もフーシ派の手に渡った。その後、本船をはじめとする石油備蓄施設は内戦の激化に伴って石油輸出がストップした結果、今日に至るまでメンテナンスされることなく放置されたことによって著しく老朽化が進展しており、国際連合やグリーンピースなどの団体から本船の老朽化によってもたらされる周辺環境への被害を懸念する意見が上がっている。 現在、本船はエンジンを作動していない状態で放置されており、船内には推定110万バレルの原油が貯蔵されている状態にあり、この量は1989年3月24日に発生したエクソンバルディーズ号原油流出事故で流出した原油の量の4倍以上に相当する。このため、本来は船内で不活化ガスを精製し貯蔵タンクに送ることで食い止められる原油から発生する揮発性のガスの滞留を食い止めることができておらず、国連の担当者は本船が「壊滅的な爆発」を引き起こす可能性を指摘している。また、船体に亀裂が入ることによって原油が直接紅海に流出すれば周辺海域に大打撃が及び、流出した原油はスエズ運河やホルムズ海峡に至る可能性も指摘されている。2020年には海水が船内に漏れたことが原因で機関室が浸水し、船内の消火システムが作動しなくなる事態も発生している。 現地を事実上勢力下に置いているフーシ派は国連に対し本船の点検整備を要求しているが、イエメンの現政権の後ろ盾となっているサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの国々が国連調査団の本船への立ち入りを妨害しているとして、かつては調査団の立ち入りを拒否していた。2020年7月になってフーシ派が調査団の派遣に同意し、11月には国連とフーシ派の間でタンカーの安全を確保するための合意が交わされたが、2021年現在でも調査団は本船に立ち入ることができない状況に置かれている。背景には、およそ4000万米ドル相当に換算される船内に残された原油の権利を確保したいフーシ派の思惑があると指摘されている。
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