航空機への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/09/22 20:43 UTC 版)
離着陸を行っている航空機にとって、このダウンバーストは墜落に直結する現象である。これは特に失速速度に近い速度で飛ぶ、機体姿勢の不安定な着陸時に強い下降流によって地面に機体が押されるためである。またダウンバーストと同時に起きる現象としてウインドシアがある。これはダウンバースト中心から下降流が地面に吹き付けるが、この下降流は地面に跳ね返されて乱気流となりダウンバースト中心から放射状に風向が変わる。つまり低高度で急激に風向が変わるのである。 例えば着陸進入時に滑走路手前でダウンバーストが発生していたとすると、最初は強い向かい風が吹くために機体が浮き上がる。これに対してエンジン出力を絞るなどしてパイロットは着陸進入を続けるが、ダウンバースト(マイクロバースト)中心付近を通過すると一挙に機体が地面に向かって押された後で、今度は機体に対して強烈な追い風が吹く。このためエンジン出力を増して対気速度を上げる必要に迫られるが、民間機用のジェットエンジンはレシプロエンジンと違いパイロットの操作から出力上昇まで数秒のタイムラグがある。従って着陸時は元々失速速度までの余裕が少ないために、あっという間に失速に陥ってしまい低高度のため回復させる余裕もなく墜落してしまうことがある。墜落に至らなくても、ほとんど墜落に近いかなりの衝撃を伴ったハードランディングとなる。 このような事故が1970年代から1980年代に特に民間航空機の就航本数の多いアメリカ合衆国で多発した。そのため、近年では空港に気象用ドップラー・レーダーを設置し、その発生を検知・予測し、墜落事故の防止を行う研究が進んでいる。また、航空機側でもウインドシアに対する対策は進められており、A320等ではウインドシアを感知した場合、警告を発すると共に自動的にゴーアラウンドに入って回避するプログラムが作動するようになっている。 アメリカ合衆国におけるダウンバーストが原因となった航空事故としては、 イースタン航空66便着陸失敗事故(1975年6月24日) パンアメリカン航空759便墜落事故(1982年7月9日) デルタ航空191便墜落事故(1985年8月2日) USエアー1016便墜落事故(1994年7月2日) などが挙げられる。 なお、日本でも旧日本エアシステム(JAS 現在はJALと合併)機が1993年に花巻空港でウインドシアを大きな要因とした着陸失敗事故(日本エアシステム451便着陸失敗事故)を起こしている。
※この「航空機への影響」の解説は、「ダウンバースト」の解説の一部です。
「航空機への影響」を含む「ダウンバースト」の記事については、「ダウンバースト」の概要を参照ください。
- 航空機への影響のページへのリンク