自然生態系への影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/12 21:06 UTC 版)
現代においてほぼ世界中に存在するイエネコであるが、これは人為的に広まったのであり、それぞれの地域の生態系にとっては外来種であるイエネコは国際自然保護連合がリストアップした「世界の侵略的外来種ワースト100」にもランクインしており、人間に持ち込まれた猫によって地域の固有種を含む生態系に影響を及ぼしている事例がある。 生物の絶滅の主原因は人間による生息域の破壊・環境汚染・乱獲だが、多様性の危機において、2010年代に入って、ネコは世界各地で自然保護において脅威的存在になっていることが科学的に明らかにされていきている。ネコは人が集う地域における生息密度が高く、同サイズの野生捕食者より10倍から100倍に達することもあり、その影響力は自然界の捕食動物より大きい。世界各地の島嶼で絶滅した鳥類、哺乳類、爬虫類の14%はネコが主な原因で絶滅したことが示唆されており、これは捕食による絶滅の26%にあたる。 イエネコは本来狩りをする生き物であるため、充分にエサを与えられていたとしても野生生物を捕殺してしまう。ジョージア大学のSonia Hernandezが行った研究によれば、毎日エサを与えられている31匹の野良猫にカメラを取り付けて追跡したところ、そのうち18匹が1日平均6.15匹の希少種ネズミを捕殺していた。アメリカではネコによって毎年1億羽の小鳥が捕殺されているという研究結果も出ている。 日本では、沖縄県のヤンバルクイナや鹿児島県奄美大島のアマミノクロウサギなどの希少種が野ネコに捕食され問題となっている。東京都の小笠原諸島では野ネコにより当該地域を繁殖地とするカツオドリや絶滅危惧種で当該地域にしか見られないアカガシラカラスバトなどが襲われていたが、野ネコを保護し当該地域から排除することでアカガシラカラスバトの生息数を回復させた。しかし一方で天敵のネコがいなくなったことで外来種のネズミが増え、固有種の植物が食害により数を減らしてしまうこととなった。ニュージーランドでも希少種の保護を目的としてネコのみを排除してしまったことで、同様に希少種の天敵であった外来種ネズミが増加し、希少種の保護につながらなかった事例があることから、対策に関しては個々の環境を精査に上、ネコだけでなく中位捕食種への対策も並行して行うなどの効果的なアプローチを選択する必要がある。また、奄美大島では猫の捕獲事業で仕掛けた猫用の罠に、保護対象の希少動物がかかり死んでしまった事例もあるため、捕獲方法を再検討することとなった。 一方、沖縄県西表島では野ネコからイリオモテヤマネコへの猫エイズの感染が懸念されていたため、野ネコを捕獲したのちに里親を探し譲渡するという活動に取り組んでいる。 ニュージーランドのスティーブンズ島における事例では、固有種であるスチーフンイワサザイの最後の1羽が、灯台守が飼育していた1匹のイエネコに捕食されたことにより絶滅した。ただし、元々スチーフンイワサザイは先史時代にはニュージーランド全域に生息していたが、マオリとともニュージーランドに到達していたナンヨウネズミによる捕食により、19世紀の時点ではスティーブンズ島においてイエネコが駆逐した15羽しか確認されていない。 また、スコットランドやハンガリーにも同様の問題があるが、捕殺や捕食による影響だけではなく、スイスのヤマネコとイエネコのように、近種との交雑による固有種絶滅も危惧されている。
※この「自然生態系への影響」の解説は、「ネコ」の解説の一部です。
「自然生態系への影響」を含む「ネコ」の記事については、「ネコ」の概要を参照ください。
- 自然生態系への影響のページへのリンク