統制システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/03/22 15:26 UTC 版)
互恵的利他主義の機能のために、自然選択はそれぞれの個体の複雑な心的システムをひいきする。そこには他者へ恩恵を施す傾向、ズルをして搾取する傾向、恩恵に返礼し、ズルに報復する傾向が含まれる。以下のような心的メカニズムは互恵的利他主義をうみだし維持する直接要因となる。 感情:他者を好む傾向、友情、好感の持てる知人に対する利他的行動の動機付けとなる。 道徳的攻撃性:「いかさま師」は互恵主義者のこのようなポジティブな感情を利用するため、いかさま師を見つけ排除するシステムは自然選択によって対抗適応として選択されやすい。利他主義者は違反者に献身的な行為を続けるのではなくて、違反者の態度を変えさせようとする。このメカニズムは非互恵的個体を教育したり、極端なケースでは隔離したり、傷付けたり、追放する。 感謝と同情:感謝は利他行為への返報を動機づける。同時にコスト/利益比への敏感さも統制するだろう。同情は受益者の状態に応じて、行為者の利他的行為の動機付けとなる。 罪の意識:いかさまを発見されれば友好的な関係は終わり、違反者にとっては大きなコストとなる。したがって選択圧は違反者に不正行為の償いをし、それを繰り返さないと他の個体に納得させるような心的メカニズムを形成するよう働く。罪の意識は違反の埋め合わせと将来の互恵関係の再開の動機付けとなる。落ち込みのような特定の精神的メカニズムは誠実さや和解を強化し、促すメカニズムと見なせるかも知れない。 微妙な不正行為:利他主義者の振りをすることで、人は他者の自分への態度へ影響を与えられるかも知れない。微妙な不正行為は共感を得るために見せかけの道徳的攻撃性、見せかけの罪の意識、見せかけの同情を必要とするかも知れない。安定した進化的平衡はわずかな割合の違反者を許容する。微妙な不正はいかなる互恵的な集団に置いても存在しうる。精神病質の適応性はこれによって説明可能かも知れない。 信用:選択は道徳的攻撃性を感知する能力を支持する。感情的な基盤(寛容さや罪の意識)無しで利他的行為を行う人々はたとえ利他主義的であっても将来的には信頼できないかも知れない。 協力:利他行為は(感謝の感情がある他の個体に)友好的な感情を引き起こす。それは相互関係のきっかけとなる。「あなたがして欲しいことを他人にし、他人からして欲しいことをして貰う」という戦略は従って選択的な有利さをもたらす。赤の他人や敵への親切は新たな友好関係を引き起こすかも知れない。 多党的な相互関係:人間が小さな固く結びついた集団で生きている状況では、人は他の人々から利他主義やいかさまを学ぶことができる。人々は不正行為を強制したり、交換関係を築くためにルールへの同意に基づいて共に行動するかも知れない。 発達的可塑性:生態的、社会的は時間や場所によって幅広く変化する。利他主義といかさま形質の発達的可塑性は利点をもたらす。単純な心的システムは互恵的利他主義者である必要条件を満たすことができない。発達的可塑性は特に親族から、適切な反応を学ぶことができる。例えば罪の意識に関する教育は他者の小さな不正を許したり、より重大な結果に結びつく過ちを思いとどまらせることができる。
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