紛争鉱物
別名:コンフリクトミネラル
英語:conflict minerals
紛争地域において産出され、鉱物を購入することで現地の武装勢力の資金調達につながり、結果として当該地域の紛争に加担することが危惧される鉱物の総称。特に、コンゴおよびコンゴに接する国々で採掘される、スズ・タンタル・タングステン・金の4種の鉱物を指す。
紛争鉱物は、その採掘過程において武装勢力グループが関与しており、取引高の一部が武装勢力に流れる。結果として武装勢力が力を蓄え、掠奪や暴力を助長する要因となっているとされる。
紛争鉱物は、米国で2010年7月に成立した「金融規制改革法」において指定された。金融規制改革法の成立により、米国の上場企業には、該当地域から調達した鉱物の使用状況を報告する義務が課せられた。
紛争鉱物として指定されているスズ(tin)・タンタル(tantalum)・タングステン(tungsten)・金(gold)は、総称して「3TG」とも呼ばれる。それぞれコンピュータの部品の製造などに必要な鉱物資源であり、先進国での需要が高い。
紛争鉱物の産出国として指定されている国は、コンゴ、および、アンゴラ、ザンビア、タンザニア、ウガンダ、南スーダン、ルワンダ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ブルンジの計10ヵ国である。
金融規制改革法は米国の法律であるが、米国の証券取引所に上場している日本企業も対象となる。2013年4月現在、日本国内では法律上の規制や義務などは特に課されていないが、電子情報技術産業協会などが中心となって責任ある鉱物調達の取り組みを推進している。
関連サイト:
米国の紛争鉱物開示規制 - 経済産業省
紛争鉱物問題に関して - 一般社団法人 電子情報技術産業協会・責任ある鉱物調達検討会
ふんそう‐こうぶつ〔フンサウ‐〕【紛争鉱物】
紛争鉱物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/09 07:14 UTC 版)
紛争鉱物(ふんそうこうぶつ)とは、人権蹂躙を引き起こす内戦や紛争や戦争によって、武装勢力や反政府組織の資金源となっている天然鉱物のこと。
概要
アフリカにあるコンゴ民主共和国(旧:ザイール)及び周辺9ヶ国(コンゴ共和国、アンゴラ、ザンビア、タンザニア、ブルンジ、ルワンダ、ウガンダ、南スーダン、中央アフリカ)で採掘される鉱物資源について注目されている[1]。
コンゴ民主共和国では、鉱物利権を巡って第二次コンゴ戦争が起こり、2003年に形の上では終結したが、周辺国も巻き込んで多くの武装勢力が入り乱れて争う状態が続き、鉱山採掘における過酷な強制労働や女性への性的被害等の人権蹂躙が問題視されている[2][3]。
これらの武装勢力はスズ(Tin)、タンタル(Tantalum)、タングステン(Tungsten)、金(Gold)といった鉱物を資金源にしており[4]、これら4つの鉱物は3TGとも呼称される[4]。3TGは携帯電話、コンピューター、ジェット機のエンジン部品、電子・通信機器等の多様な製品や照明、暖房、溶接の用途に使用されている[4]。
非常に広義にみた際に、3TGが使用されている工業製品の使用者や利用者は、結果としてコンゴ民主共和国及びその周辺9ヶ国の武装勢力の資金を増大させ、人権蹂躙に結果として加担している。このことから紛争鉱物を使用しない、使用率を下げる方針が世界中に広まっている。
この問題に対処する為、アメリカ合衆国では株式市場に上場する企業に対し、3TGについて供給元等の情報についてを開示する事を義務付けるドッド・フランク法が2010年に制定され、2013年から施行された[5]。鉱物供給元開示義務の対象となる企業はアメリカ合衆国内外の約6,000社と推計され、対象企業のサプライチェーン企業にも影響を与えている[4]。
ドッド・フランク法では、アメリカ合衆国の株式市場における上場企業は、紛争鉱物の使用を禁止されているわけではないが、製品に紛争鉱物を使用した部品が組み込まれていることを公表すれば、国際的なボイコットの標的になる可能性があり、企業が業績への影響を避けようとすれば、紛争鉱物を利用しなくなり、武装勢力への資金が減少して、人権蹂躙が抑制できるという期待がある[6]。
脚注
- ^ KPMG & あずさ監査法人, p. 62・104.
- ^ デロイトトーマツ紛争鉱物対応チーム 2013, pp. 4–5.
- ^ KPMG & あずさ監査法人, p. 16.
- ^ a b c d KPMG & あずさ監査法人, p. 62.
- ^ デロイトトーマツ紛争鉱物対応チーム 2013, pp. 16–17.
- ^ KPMG & あずさ監査法人, p. 117.
参考文献
- デロイトトーマツ紛争鉱物対応チーム『ここが知りたい 米国紛争鉱物規制』日刊工業新聞社、2013年。ISBN 4526070947。
- KPMG、あずさ監査法人『紛争鉱物規制で変わるサプライチェーン・リスクマネジメント』東洋経済新報社、2013年。 ISBN 4492533257。
関連項目
外部リンク
紛争鉱物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 03:20 UTC 版)
天然資源が武力紛争の原因や武装勢力の資金源とされることがあり、紛争鉱物とも呼ばれる。紛争鉱物を用いた製品が製造される可能性があるため、アメリカでは紛争鉱物の開示規制も進んでいる。
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