第3部: The Crisis (危機)
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「インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実」の記事における「第3部: The Crisis (危機)」の解説
経済学者ベン・バーナンキは、サブプライム残高ピークの2006年2月に、FRB議長に就任した。2004年にはFBIが住宅ローン詐欺の蔓延を警告。いい加減な査定や、ローン書類の細工などの詐欺行為を報告していた。2005年にはIMFのR・ラジャンが報酬体系の問題を指摘。2006年にはジャーナリストのアーラン・スローンもフォーチュンとワシントンポストに警告記事を掲載。IMFのドミニク・ストロス=カーンは、アメリカ政府や財務省・FRBに警告を発した。パーシング・スクエアのビル・アックマンCEOは、“誰がババを引くか?(Who is Holding The Bag)”と題し、バブル崩壊の解説書を発表。2008年初頭、チャールズ・モリスが差し迫る危機の本を出した(「The Two Trillion Dollar Meltdown」)。住宅の差し押さえは急増し、証券化の連鎖が破綻。貸し手は住宅ローンを売れず、ローンも焦げ付き、次々倒産。CDO市場は崩壊し、投資銀行は大量の売れないローンやCDOや不動産を抱えた。 金融危機が始まった時、ブッシュ政権とFRBはその規模を理解しておらず、ヘンリー・ポールソン長官は、2008年2月9日の東京G7会議で、「成長は持続している、間違いない。成長が続いている以上、リセッションはあり得ない」と発言した。しかし実際には、その4か月前に景気後退は始まっていた。2008年3月、資金繰りに窮した投資銀行ベアー・スターンズをJPモルガンチェースが救済買収。FRBはこの取引に対し、300億ドルの緊急融資を行う。2008年9月7日、経営危機のファニーメイとフレディマックの国有化が発表された。その2日後、リーマン・ブラザーズが32億ドルの損失を発表、株価は急落した。FRBの6人いる理事のひとり、フレデリック・ミシュキンは、2008年8月31日に辞職。理事席7つのうち3つが空席になった。9月12日、リーマンの資金繰りが悪化。ポールソン長官とガイトナーNY連銀総裁は、リーマン救済のためシティーグループのヴィクラム・パンディット、モルガンスタンレーのジョン・J・マック、JPモルガンのジェームズ・ダイモン、ゴールドマンサックスのロイド・ブランクフェインなど主要銀行CEOを招集。メリルリンチは破綻の瀬戸際で、バンク・オブ・アメリカに吸収された。リーマンを買収しようとしたのはイギリスのバークレイズ銀行だったが、イギリス当局はアメリカ政府の資金投入を求め、ポールソン長官はこれを拒否。リーマンは9月15日に破産法の適用を申請し倒産。何千何万という取引がすべて停止し、破綻したリーマンへの債権7億ドルが回収不能となった。コマーシャルペーパー(CP)市場も崩壊し、会社の従業員は解雇、部品も変えず、業務は停滞。その同じ週、アメリカ最大手保険会社AIGが経営危機で国有化。翌日ポールソン長官らは、議会に銀行救済費7千億ドルを要求。拒否すれば金融界は崩壊すると警告した。AIGの救済でCDSのゴールドマンサックスら買い手に610億ドルが支払われた。財務省とFRBはCDS額面1ドル当たり100セントの全額支払いを指示。AIG救済で1500億ドル以上の税金が使われた。 リーマン、メリルリンチ、AIGの3社のムーディーズ格付けは、破綻の直前まで最低でも「A2」だった。
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