第2ラウンド1組、メキシコ - アメリカ戦
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「ボブ・デービッドソン」の記事における「第2ラウンド1組、メキシコ - アメリカ戦」の解説
同年3月16日に行われたメキシコ - アメリカ戦の2回表のアメリカの攻撃、無死一塁でバーノン・ウェルズが左翼方向に飛球を打ち上げた。左翼手が走り込みながらウォーニングトラック前で捕球し、中継の遊撃手へ、遊撃手から一塁手へ送球された。一塁走者のアレックス・ロドリゲスは左翼手の捕球時、二塁付近におり、そこから一塁にスライディングしながら帰塁した。遊撃手はアウトを確信しガッツポーズをしていたが、一塁塁審のデービッドソンはこれをセーフと判定した。 さらに3回裏、メキシコのマリオ・バレンズエラがロジャー・クレメンスから放った打球は右翼ポール際に飛び、直接ポールの中ほどに当たって大きく撥ね、フェアグラウンドに戻ってきた。打球が直接ポールに当たったのであれば本塁打であるが、一塁塁審のデービッドソンは「ホームラン」の宣告をせず、これをボールインプレイとした(球がフェンスの上方を越えた時点で、ボールインプレイという判断はありえない)。メキシコは激しく抗議したが、マウンド付近に審判団が集まって協議した結果、責任審判であるデービッドソンは二塁打を宣告した。メキシコはさらに、ボールに付着していたポールの黄色い塗料を審判団だけでなくテレビカメラにも見せ付けるなど強くアピールしたが、結局判定は覆らず、無死二塁としてプレーが再開された。 このプレイはスタジアム内のスクリーンに何度もリプレイされ、その判定が「誤審」としか見られない状況が映し出されたことで場内は騒然となった。 メキシコは第2ラウンド進出が絶望的な状況にあり、試合前日には練習を休んでディズニー・ワールドで遊んでいたが、この判定に奮起。直後にホルヘ・カントゥの適時打で先制すると、5回裏にも追加点を奪い、8人の継投でリードを守り切って2 - 1でアメリカに勝利した。この結果、1勝2敗で日本、アメリカ、メキシコが並ぶことになったが、失点率(総失点を守備イニング数で除した値)が最も低かった日本が準決勝に進み、アメリカの第2ラウンド敗退が決定した。 試合後、メキシコのフランシスコ・エストラーダ監督は「球場全体が本塁打だと思ったはずだが、審判だけがそう思っていなかった」、打者のバレンズエラは「あの細長い物がフェンスに見えたんだろう」と皮肉を交えたコメントをした。前述の日本戦の判定に続いて、野球発祥国であり大会主催国でもあるアメリカを意図的に勝たせようとした判定とも取れる誤審が続いたためか、同じくメキシコ代表選手のゴンザレス(エイドリアン・ゴンザレスかエドガー・ゴンザレスのどちらなのかは不明)は試合後「我々が次のステージへ進むことは適わなかった、しかし残されていた最後のもう1つの椅子に座るのにアメリカはふさわしくないチームだった。我々が日本をその席につける力になれたのなら幸せだ」というコメントを残している。先述の「今大会のMVPはデービッドソンだ」は、このメキシコ代表の大奮起を促しアメリカ代表を敗退させたことへの皮肉でもある。 なお、この試合で勝利を収めたメキシコには、日本を始めとして各国から賞賛の声が上がり、日本のメキシコ大使館には「お礼の電話」や「感謝の電報」、メキシコチームに対する賞賛の電子メールが多数届いたという。
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