第1幕 「アイルランドからコーンウォールに渡るトリスタンの船の甲板」
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「トリスタンとイゾルデ (楽劇)」の記事における「第1幕 「アイルランドからコーンウォールに渡るトリスタンの船の甲板」」の解説
前奏曲 作品全体の核となる動機が呈示される。詳細は#音楽の節参照。 第1場 アイルランドからコーンウォールへと向かう船上。アイルランドの王女イゾルデは、コーンウォールのマルケ王に嫁ぐために乗船しており、マルケ王の甥トリスタンが船の舵を取っている。水夫の歌が聞こえ、歌詞に「アイルランドの娘」と出てきたことに、自分への侮辱を感じたイゾルデは身を起こす。侍女ブランゲーネがイゾルデの不機嫌を察してなだめようとする。イゾルデは、息が詰まりそうなので天幕を開けるよう命じる。音楽は、船が大海原を進んでいることを示す「海(航海)の動機」を繰り返す。 第2場 天幕が開き、水夫の歌が再び聞こえる。イゾルデは舵を取っているトリスタンの姿を見て、「私のために選ばれながら、私からは失われたあの人」と歌う。イゾルデはブランゲーネを使いに出し、トリスタンに挨拶に来させようとする。 ブランゲーネから請われたトリスタンは、イゾルデの名を聞いてたじろぎ、職務を口実に持ち場を離れることを断る。トリスタンの従者クルヴェナールが「モーロルトの歌」で主人を称賛し、船乗りたちがこれを繰り返す。イゾルデの婚約者だったモーロルトをトリスタンが討ったことを歌にされ、イゾルデは怒りを募らせる。 第3場 戻ってきたブランゲーネに、イゾルデは「タントリスの歌」で過去を語り出す。 かつてイゾルデの従兄で許嫁でもあったモーロルトがコーンウォールに朝貢を要求し、トリスタンは決闘でモーロルトを倒した。しかし、このときトリスタン自身も深手を負う。イゾルデが優れた癒しの術を持つことを知ったトリスタンは「タントリス」の偽名を使い、彼女に治療を頼んだ。イゾルデはトリスタンがモーロルトの仇であることに気づき、復讐のために剣を用意するものの、トリスタンの哀れな姿に剣を取り落とし、治療したのだった。 トリスタンはコーンウォールに戻るとマルケ王にイゾルデとの婚儀を勧め、そのための使者となった。したがって、イゾルデにとってトリスタンは婚約者を殺した仇であり、アイルランドからの「貢ぎ物」とされた原因でもあった。 ブランゲーネはイゾルデを慰めるため、マルケ王との結婚がうまくいくようにイゾルデの母が調合した魔法の薬を各種持参していると話すが、イゾルデはブランゲーネに毒薬を用意するよう命じる。水夫たちの合唱が、陸が近づいたことを報せる。 第4場 上陸の準備をするように告げにきたクルヴェナールを、イゾルデはトリスタンの謝罪がなければ上陸しないといって追い返す。ブランゲーネはイゾルデに思いとどまるよう懇願するが、イゾルデの意志は固く、ブランゲーネは激しく狼狽する。 第5場 トリスタンがイゾルデの前にやってくる。イゾルデはこれまでの恨み辛みを語ってトリスタンを責め立てる。二人はお互いに惹かれ合いながらもそれを直接言葉に表すことができない。トリスタンは剣をイゾルデに差し出し、いまこそモーロルトの仇討ちを果たすよう申し出る。イゾルデは手を下すことができず、ブランゲーネに用意させた薬を「和解の薬」としてトリスタンに渡す。トリスタンは死を覚悟して杯をあおる。イゾルデはトリスタンの手から杯をひったくり、自分も死ぬつもりで半分残った薬を飲む。ところが、薬は毒薬ではなく、ブランゲーネがとっさにすり替えた媚薬だった。たちまち愛の炎が燃え上がった二人は、互いに名前を呼びあいながら抱擁する。この事態に恐れおののくブランゲーネ。船がコーンウォールに到着し、周囲の船乗りたちの歓声が上がる。現実に呼び戻された二人は、自分たちの身に何が起こったのか理解しようとしてもがく。
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