竹
『竹取物語』 竹取の翁は野山に入って竹を取り、さまざまなことに使った。ある時、根もとの光る竹が1すじあったので、近寄って見ると、筒の中が光り、3寸ほどの女児がいた〔*『竹取物語』では、「竹を切った」と明記されているわけではない。『神道集』巻8-47「冨士浅間大菩薩の事」では、管竹の翁・加竹の嫗の家の後庭の竹林から、5~6歳の幼女が現れた、とする。『海道記』では、鶯の卵から生まれる〕。
『竹の子童子』(昔話) 桶屋の小僧・三吉が、樋に使う竹を伐(き)りに、裏の竹山へ行く。竹の中から「出しておくれ」と声がするので、鋸で伐ると、5寸くらいの小さな子供が出て来た。子供は、「おれは竹の子童子。年は1千2百34歳」と名乗り、「悪い筍につかまり、竹の中に入れられて、天へ帰れなかった」と言う。竹の子童子は、天へ帰れるようになったお礼に、三吉に、願いが叶うまじないを教える。三吉はまじないを唱えて、かねて念願の侍になった(熊本県球磨郡)。
*川を流れる竹の中から、小さな子が現れる→〔洗濯〕1の『異苑』巻5-4。
『異苑』巻5-4 竹王が生まれ出て来た竹(*→〔洗濯〕1)は、野原に棄てられた。その竹から、たちまち竹林が生じた。その竹林は今もある。
*枯竹が根づき、竹林になる→〔あり得ぬこと〕1aの親鸞の伝説。
才蔵竹の伝説 福島正則臣下の豪傑・可児才蔵は(*→〔首〕3a)、晩年、仏門に入り、庶民の悩みを救おうとこころざして、「私の墓から3日以内に竹が生えるから、その葉に祈願すれば、首から上の病を治すべし」と遺言した。彼の言葉どおりに竹が生え、竹の葉によって、脳を病む者が不思議に治るので、「才蔵竹」として知られた。今は受験生などまでが、この竹を守護神視し、才蔵地蔵も建てられた(広島県広島市周辺)。
★4.地から生えた竹が人を殺す。
『懐硯』(井原西鶴)巻4-2「憂目を見する竹の世の中」 石見の国の男が、5月半ば、商売に出かけ1晩留守にした間に、老母が寝間で朱にそまって死んでいた。男は、「隣人が金目当てにしたことだ」と思って、隣人を殺した。しかし代官が調べると、家の後ろの竹藪から根が延び、寝間の下から生え上がった勢いで、老母の胸元を刺し通したことがわかった。
★5.竹の釘。
『しわい屋』(落語) けちな男から、「雨戸を修繕するので、金槌を借りて来い」と命ぜられ、小僧が近所へ借りに行く。近所の男「鉄の釘を打つのか? 竹の釘を打つのか?」。小僧「鉄の釘です」。近所の男「鉄の釘を打つと金槌が減るから、貸せない」。小僧が「断られました」と言って帰って来ると、けちな男は、「しかたがない。うちの金槌を使おう」。
『椿説弓張月』前篇巻之5第12回 鎮西八郎為朝は、武藤太の裏切りによって、伊豆大嶋へ配流された。為朝の妻白縫は、夫の恨みを晴らすべく、武藤太を捕らえて拷問する。女使(こしもと)たちが、懐剣で武藤太の10本の指を切り落とし、5寸余りの竹釘数10本を、彼の身体中に打ち込む。急所をよけて肩・太腿・臀などに打つので、武藤太は死ぬこともできず泣き叫ぶ。さんざんに苦しめて後、白縫は武藤太の首を刎ねる。
★6.竹林の怪。
『百物語』(杉浦日向子)其ノ71 娘が竹林で筍を掘る。向こうの竹の間を、前かがみの爺が歩いて行く。爺は、2度、3度、同じ所を通る。「狐にばかされたのか」と思って、娘が声をかけると、爺は「おッ母さん」と言って娘に抱きつく。そして、見る間にしぼんで溶けてしまった。娘はやがて結婚し母となって、この体験を年若い息子に語る。息子は「俺が爺になると、竹薮で娘姿のおッ母さんと会うのだろうか」と思う。
竹と同じ種類の言葉
- >> 「竹」を含む用語の索引
- 竹のページへのリンク