研究内容ならびに業績
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:00 UTC 版)
専門は進化古生物学で、主に化石・現生二枚貝類を素材とした系統分類・古生物地理・古生態などの研究を行い、古生物学の分野に遺伝学・生物地理学・生層序学・プレート・テクトニクスなど広範な分野の概念・手法を導入し、国際的に注目される多くの業績をあげた。 本邦中生代二枚貝類の系統分類に関する研究では、1956年に本邦ジュラ紀二枚貝類の研究に着手し、堅実かつ精密な分類手法に基づく種分類を確立し、1961年に博士論文として総括された。論文は日本古生物学会報告紀事などに次々と公表され、これら一連の業績により、1962年に日本古生物学会学術奨励金(現学術賞)を受賞した。その成果は本邦前期白亜紀海生二枚貝類の研究(1965−66年)へと発展し、東アジアの後期中生代二枚貝動物群の系統進化や時空分布の解明につながった。 集団を基礎とした生物の相対成長・不連続変異・機能形態・進化に関する研究では、単一個体に基づく類型的研究が主だった従来の古生物学に「集団(個体群)」概念を導入することの重要性に気づき、相対成長の理論(1970年)、ヒヨクガイの不連続変異の解析(1973年)、化石帯の進化学的モデル(1975年)、進化におけるサイズ変化率と様式(1978年)など、革新的な論文を発表した。また、二枚貝類の斜彫刻の理論形態(1986年)、前期鮮新世二枚貝タカハシホタテの機能形態(1988年)、イタヤガイ類の遊泳に関する流体力学的実験(1991年)など、機能形態の分野でも独創的な研究を推進した。これらの成果は、内外の専門誌・教科書に広く引用され、その後の進化古生物学の発展に大きく寄与した。 イタヤガイ類や海底洞窟産原始軟体動物の自然史に関する研究では、ヒヨクガイの進化学的研究の総括(1984年)や、海底洞窟産原始的二枚貝類のモノグラフ(1993年)において、生物進化を総合的に考究する自然史科学的手法を確立した。従来まで生物学と古生物学の間に障壁があったが、形態・化石記録・生態・発生・遺伝・生殖・生物地理など多くの情報に基づくアプローチによる分析と総合を行うことにより、その障壁が取り除かれた。これらの研究成果等による自然史科学発展への多大な功績によって、1998年に日本古生物学会賞(横山賞)を受賞した。
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