発行と流通のしくみ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/27 02:10 UTC 版)
日本国債は日本国内の預貯金取扱金融機関や証券会社で購入できる。 個人向け国債については、現在東京スター銀行では販売取扱がなく、通常の国債(利付国債等)の取扱いがないネット証券では取り扱っている会社がある。 日本国債は入札方式により銀行・証券会社・生損保等の金融機関が購入し、これがその他の機関投資家や個人に販売される。また、財投債という形で郵貯・簡保・年金資金運用基金が引き受けている部分もある。2005年(平成17年)度以前は「シンジケート団(シ団)引き受け」と呼ばれる金融機関が共同で引き受ける方式も行われていたが、2005年度末をもって廃止された。流通においては、通常の売買、レポ・現先といった貸借取引の他、日銀によるオペレーションも大きな役割を担っている。 なお現在は、国債の株式等振替制度により、紙での受け渡しはされなくなっている。機関投資家以外の一般的な個人向けには、以前より証券を販売金融機関に保護預かりする制度があり、銀行・協同組織系金融機関・ゆうちょ銀行の場合、総合口座に「国債(公共債)保護預かり口座」をセット(担保に組み込む)すると、総合口座普通預金の残高が不足した場合に、国債預かり残高の一定額(ゆうちょ銀行の場合は額面の80%まで)を限度に、「総合口座担保定期預貯金」と同様に、自動融資(口座貸越)・担保自動貸付けが受けられる場合がある。ただし、足利銀行など、取扱いを取りやめた、または取り扱わない金融機関もある。ゆうちょ銀行(旧郵便貯金)の場合は、「国債保護預かり口座帳」で直接貸付を受けることも可能である。 ゆうちょ銀行は保護預かり口座に旧郵便貯金のように通帳状にした「国債保護預かり口座帳」を発行しているが、それ以外の金融機関ではそのようなものは発行せずに利払日や手続きごとに取引内容を報告書形式で郵送する方法が主流となっている。(ゆうちょ銀行・郵便局でも都度報告書は発送している。) 一部の銀行・証券会社は「国債保護預かり口座管理料」の名目で保管料を徴収する。また、ゆうちょ銀行では国債購入“以前”に国債保護預かり口座を開設するには200円の口座開設手数料が必要である。 政府は民間銀行に預金口座を保有しておらず、日本銀行にのみ口座を開設しているため、銀行が国債を購入するには、銀行が日本銀行に保有する当座預金残高を利用するしかない。銀行が国債を購入するプロセスは、具体的には以下の通りである。 銀行が国債(新規発行国債)を購入すると、銀行保有の日銀当座預金は、政府が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる 政府は、たとえば公共事業の発注にあたり、請負企業に政府小切手によってその代金を支払う 企業は、政府小切手を自己の取引銀行に持ち込み、代金の取立を依頼する 取立を依頼された銀行は、それに相当する金額を企業の口座に記帳する(ここで新たな民間預金が生まれる)と同時に、代金の取立を日本銀行に依頼する この結果、政府保有の日銀当座預金(これは国債の銀行への売却によって入手されたものである)が、銀行が開設する日銀当座預金勘定に振り替えられる 銀行は戻ってきた日銀当座預金でふたたび国債を(新発債)を購入することができる 以上のプロセスが示すように、銀行は集めた民間預金を元手に国債を購入しているわけではなく、日銀が供給した日銀当座預金を通じて、国債を購入しているため、銀行の国債購入は、民間預金の制約を一切受けず、銀行が国債を購入して政府が支出する場合、銀行の日銀当座預金の総額は変わらない。また、政府が国債を発行して、財政支出を行った結果、その支出額と同額の民間預金が新たに生まれる。つまり、政府の赤字財政支出は、民間預金を減らすのではなく、逆に増やすことになる。それゆえ、財政赤字の増大によって民間資金が不足し、金利が上昇するなどということは起き得ない。
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