発令の背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 03:26 UTC 版)
「大統領令14014号」の記事における「発令の背景」の解説
2020年11月に実施された現行憲法下(2008年ビルマ憲法)における3度目の総選挙で国民民主連盟(NLD)は圧勝し、翌年2021年2月1日にビルマ連邦議会両院の招集が予定されていた。 連邦団結発展党(USDP)と国軍は2020年11月の総選挙に不正があった可能性を指摘し、2021年1月末には国軍と文民政府の代表者の会談が行なわれ、国軍側は票の数え直しや議会の開会延期を求めたが、文民政府側はこれを拒否し、2月1日未明、国軍はアウン・サン・スー・チー国家顧問、ウィン・ミン大統領、その他の連邦大臣のほか、ビルマの連邦議会や地方議会(英語版)のNLDの議員や多数のNLD党員を正当な理由無しに不当に拘束した。ビルマの大統領は民意を反映した議会により選出され、国防大臣(英語版)、内務大臣(英語版)及び国境大臣(英語版)を除く連邦大臣は、大統領が指名し連邦議会が承認した後に大統領により任命される(ビルマ憲法第232条(2)項・(3)項)。大統領は連邦議会に対し責任を負い(ビルマ憲法第202条)、連邦大臣は大統領に対し直接責任を負う(ビルマ憲法第232条(8)項)。 ウィン・ミン大統領が不当に拘束された後、国軍からの独立性が極めて低い元軍人のミン・スエ第一副大統領が大統領代行に就任した。これについて国軍側は、ビルマ憲法第73条(1)項の「大統領が任期終了前に辞職した場合であれ、死亡した場合であれ、また職務を継続的に遂行できなくなった場合であれ、何らかの理由により大統領職に空席が出来た場合には、2名の副大統領の内、大統領選挙の時に2番目に票の多かった者が大統領代行として任務を遂行しなければならない」との規定を、強引に適用している。 犯罪捜査を担うビルマ警察(英語版)は内務省(英語版)が管轄しており、内務大臣は国軍総司令官(英語版)による指名リストに基づき、連邦議会が承認し、大統領が任命する(ビルマ憲法第232条(2)項・(3)項)。これに関し連邦議会は憲法で規定する資格を有していないことを証明できない限り(つまり、余程のことがない限り)、任命を拒否する権利を持たないため(ビルマ憲法第232条(4)項)、事実上、国軍総司令官が内務大臣の人事権を握っているといえる。 加えて、ミン・スエ大統領代行は緊急事態宣言を行い(ビルマ憲法第417条)、ミン・アウン・フライン国軍総司令官に立法権、行政権、司法権の全権を委譲する宣言を行い(ビルマ憲法418条(1)項)、国軍総司令官は立法・行政・司法の各権を行使する権限を得た(ビルマ憲法419条)。この様に緊急事態宣言の下、国軍総司令官一人に立法・行政・司法の三権が掌握された状況で、拘束された人々が訴追された場合、公正な裁判が行われる保証は無く、勾留期間が不当に延長される恐れがある。 ジョー・バイデン大統領は、ビルマにおける最近の状況、特に2021年2月1日のクーデター(バイデン政権はビルマのこの日の政変に対し、「クーデター」という語を用いている。)において、軍が民主的に選ばれたビルマの文民政府を転覆し、政府指導者、政治家、人権擁護者、ジャーナリスト、及び宗教指導者を不当に逮捕及び勾留し、2020年11月に実施された選挙で示されたビルマ人民の意思を拒否し、同国の民主的な移行及び法の支配を損っている状況は、米国の国家安全保障と外交政策への普通ではない異常な脅威を構成すると判断し、この脅威に対処するため国家緊急事態を宣言し(当大統領令前文第2段)、当大統領令を発令した。
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