痴漢対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 20:14 UTC 版)
痴漢犯罪の減少が目的ではないものの、導入の前後で痴漢被害の件数に変化があったのかどうか多くの鉄道事業者では数値を公表していない。発表された一部の路線では、御堂筋線や埼京線のように減少した路線も、中央線快速や京王線のように増加した路線もある。また変わらない路線もある。一部の列車種別の列車のみに導入しても、未導入の列車では痴漢被害相談が継続している。車両の運用については拡大モデル調査でケース別に検討所見があり、導入に積極的な事業者でも試行錯誤が続いている事を認めている。一方、痴漢冤罪を問題視する団体が、冤罪防止の観点から女性専用車両の導入を歓迎していることを報道機関の取材に対して表明した事例も見られる。 混雑とも関わる事だが、女性専用車両の導入はあくまで次善策に過ぎず、ラッシュ時の混雑緩和こそが根本的な痴漢対策だとする意見がある。一方で、混雑緩和には相応のコストを必要とするが、運賃の値上げや増便による沿線環境への影響などの社会的負担について、乗客や住民の同意が得られるかどうかの課題が解決されていない。このため、仮に女性専用車両を廃止した場合に代替となる痴漢対策を講じられない状況にある。警視庁では痴漢対策について「電車内では狭い空間に多くの人が密集するという場所的特殊性から発生が多くなっている」と述べ、痴漢と鉄道との関連性を説明している。時間帯別についてのみた所見もあり、京王電鉄によると、痴漢の発生率の最も高いのは朝ラッシュ時間帯で、深夜、夕方ラッシュ時、昼間時間帯の順となり、国土交通省の拡大モデル調査においてもラッシュ時を重視する所見が見られる。 また、痴漢被害を受けた際に恐怖心や大きなショック・不快感などを受ける女性や、同一人物から繰返し痴漢に遭う、集団痴漢などといったケース、咎めた側が返り討ちに遭うケースなどがあった。そのため、女性専用車両が「緊急避難場所」や「駆け込み寺」としての防衛的機能を果たしている事が挙げられる。例えば、国土交通省の拡大モデル調査報告書では、「痴漢被害の根本的解決策ではないが、痴漢被害を減らす効果は期待でき、痴漢の回避手段がなかった女性にとっては女性専用車両の利用は有効な痴漢被害防止策であるとの考えのもと実施した」、と述べている。女性専用車両がなかった時代、こうした被害者は心理的にも物理的にも安全な逃げ場がなく、導入による安心感も挙げられている。また、京王電鉄によれば、上記のように深夜は2番目に発生率が高いが、帰宅時間帯であるため、被害者が泣き寝入りするケースが多かったと言う。
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