異文化研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/08 00:43 UTC 版)
近年になって、異文化の中で性格を研究することをテーマにした議論が出てきた。性格は完全に文化から由来のものであるので、異文化研究に意味のある研究はありえないという意見も見られる。一方、多くの人は、すべての文化に共通している要素もあると考えており、「ビッグファイブ」の異文化適用性を実証する努力がなされている。 異文化評価は、文化などに関係なく、人間に共通の特徴があるかどうか、つまり、性格特徴の普遍性に関するものである。性格の共通基盤があるのであれば、特定の文化内ではなく、人間の形質に基づいて研究することが可能になる。これは、評価ツールが国や文化を超えて似たような構成要素を測定しているかどうかを比較することで判断することができる。性格を研究するための2つのアプローチとして、イーミック特性とエティック特性が存在する。イーミック特性は、それぞれの文化に固有の構成要素であり、その土地の習慣、思考、信念、特徴によって決定される。エティック形質は普遍的な構成要素と考えられ、文化を超えて明らかになる形質を確立するもので、人間の性格の生物学的基盤を表している。性格形質が個々の文化に固有のものであるならば、異なる文化では異なる形質が明らかになるはずである。しかし、性格特性が文化を超えて普遍的であるという考えは、最も広く使われている人格測定法の一つであるNEO-PI-Rの複数の翻訳にわたって人格の5因子モデルを確立することによって支持されている。NEO-PI-Rを6つの言語で7,134人に試験したところ、結果は、アメリカの因子構造に見られるのと同じ5つの基本的な構成要素の類似したパターンを示していた。 同様の結果は、56カ国、28言語で実施されたビッグ・ファイブ・インベントリ(BFI)を用いたものでも見出された。この5つの要因は、世界の主要地域で概念的にも統計的にも支持され続けており、これらの基礎となる要因が文化間で共通していることを示唆している。文化の違いはあるものの、言語の翻訳には限界があり、文化によって感情や状況を表現するための独特の言葉があるため、これは語彙的なアプローチを用いて性格構造を研究した結果であると考えられる。例えば、「ブルーな気分」という言葉は、欧米化した文化では悲しみを表現するのに使われるが、他の言語には翻訳されてはいない。文化間の違いは、実際の文化の違いによるものかもしれないが、翻訳の不備、偏ったサンプリング、そして文化間の回答スタイルの違いの結果である可能性も考えられる。また、ある文化の中で開発された性格調査票を調査することは、文化を超えた特徴の普遍性を示す有用な証拠となりえる。ヨーロッパやアジアのいくつかの研究では、5因子モデルとの重複する次元や、文化独自の次元が発見されている。文化間で類似した因子が発見されたことは、性格特徴の構造の普遍性を支持するものであるが、より強力な支持を得るためにはさらなる研究が必要となっている。
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