環境への影響と中和施設
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/07 08:25 UTC 版)
鉱山周辺の原植生はブナ林であったが、鉱山開発前から伐採によりミズナラ林となっており、開発後は牧草地が広がった。しかし硫黄精錬で出る煙による土壌汚染で強酸性となり、鉱山跡地と製錬所跡は草が生えない荒地になった。その周辺も煙害によって木が枯れ(条件が悪い順に)ヒメスゲ、ススキ、チシマザサ・クマイザサの群落になった。排水中和施設の建設後は、失われた緑を取り戻すべく植林が行われている。 「松尾鉱山跡地の森林化」も参照 廃坑から流出する排水(鉱毒水)はヒ素を含むpH2前後の強酸性となっており、毎分17~24トンと多量の排水が湧出している。かつては茶色い排水が下流の北上川流域と支流を汚染しており、魚の住めない川となっていた。そのまま垂れ流せば岩手県内はもとより、宮城県北部や北東北の太平洋沿岸に至るまで水質汚濁や生態系への影響が発生するため、岩手県により排水中和施設が建設された。この施設は鉱山の排水処理施設としては日本国内でも最大規模のもので、2010年代に入ってからも24時間体制で稼働を続けているが、処理費用が年間5億数千万円かかる上に、半永久的に処理を行わなくてはならないため、岩手県にとっては財政面でも非常に大きな負担となっている。 岩手県内の小・中学校では、社会科と理科の統合授業として排水中和施設の見学を行う学校もある。恒久排水路トンネルの先端部には鉱毒水確認用の窓があり、見学者向けとして特別に水を汲むことができる。鉱毒水は非常に澄んでおり、手で触れることはできるが飲むことはできない。口に含むと血液と同等かそれ以上の鉄臭さが広がる。処理前の鉱毒水のヒ素濃度は低く、致死量に達するまでには100リットル単位の未処理水を摂取する必要がある。 恒久排水路トンネルは坑道をコンクリートで封鎖した構造のため、処理施設の稼動当初は坑道内に置き忘れた道具類が流れてくることが折々あったというが、近年ではほとんど見られない。
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