玉祖神社の占手相撲

国指定文化財等データベース

玉祖神社の占手相撲

名称：	玉祖神社の占手相撲
ふりがな：	たまのおやじんじゃのうらでずもう
種別1：	風俗習慣
保護団体名：	占手神事保存会
選択年月日：	1997.12.04(平成9.12.04)
都道府県(列記)：	山口県
市区町村(列記)：	防府市大崎
代表都道府県：	山口県
備考：
解説文：	玉祖神社は旧周防【すおう】国一の宮で玉造連【たまつくりのむらじ】の祖とされている金祖命を祀る。占手相撲はこの神社の例祭前夜に行われ、夜相撲・占手神事などとも呼ばれている。社伝では、神功皇后【じんぐうこうごう】（一説には仲哀天皇【ちゆうあいてんのう】という）が西征のみぎり参詣して出兵の吉凶を占ったことに始まると伝える。例祭は九月二十五日に近い日曜日に行われている。 　相撲の行事は戦前までは宮付【みやつき】と呼ばれる特定の氏子によって行われていた。この宮付の家は神社と特定の由緒をもつ家柄とされ、明治十年には一八名であったが、その後一三軒となり、昭和二十三年のころにこの習慣はなくなり、現在は保存会組織によって継承されている。宮付の家は占手相撲のほかに、新しく注連縄を作り忌竹【いみだけ】とともに鳥居に飾りつける斎竹祭【おはけ】の神事や、旗持ちや警護役などとして神幸祭にも奉仕した。 　占手相撲は世襲の宮付首座【しゆざ】、行事所役【しよやく】によって行われ、現在も特定の家が務めている。行事は神門と二の鳥居の間の参道で行われる。石畳に忌竹を四隅に立てて注連縄をめぐらして行事の場を作り、庭燎【にわび】を焚く。注連縄の中には裃を着けた宮付首座二名が東西に分かれて座る。神社の宮司は注連縄の外側の神門の下に着座する。江戸時代の記録には宮司はこの行事には参列しなかったことが記されており、現在でも宮司以外の神職はその日にいる者だけが参列する。 　行事所役二名が裸に羽二重の褌を締め、東西に分かれて着座する。神職が行事所役を大麻で祓い、次いで行事所役は宮付首座から「不浄除守【ふじようよけまもり】」と書かれた忌串【いぐし】を受ける。かつては行事終了までこの守りを髻【もとどり】に挟んでいたが、現在ではいったん受け取った後に宮付首座に預ける。このお守りは宮司が前日に作成し、行事終了後再び宮司の手によって処分される。 　次いで、行事所役二名は並んで宮付首座から円座を受けて正面へ供え、同様に太刀を受けて円座の上に供える。東西に分かれた行事所役は、相撲の蹲踞【そんきよ】に似た姿勢で腰に手を置いて対峙し、左足を左斜めに一歩進めては蹲踞し、さらに右足を進めて蹲踞、左足を進めて蹲踞と繰り返しながら三歩進み、相手と向き合ったところで自分の左腰を叩く。終わると同じように左右左と後退し一度目を終える。二度目は右足から、三度目は左足から歩を進めその都度蹲踞を繰り返し、二度目は右腰、三度目は両腰を叩く。この後、両者並んで円座と太刀を下げて第一回目の行事を終える。 　二回目は再度宮付首座から「不浄除守」の忌串を受け、これを宮付首座に預けた後、円座と太刀を供え、今度は最初の足を変えて同じように三歩進んで腰を叩く動作を繰り返し、最後に円座と太刀を下げて終わる。宮付首座は円座に忌串を突き立てる。 　三回目は、前二回同様、蹲踞に似た姿勢で前に進み、腰を叩く代わりにお互いに一度目は右の掌、二度目は左の掌を合わせて後退し、三度目にお互いの両手を絡ませて取り組んだまま飛び跳ねながら東西の位置を交換し、掌で平年一二回、閏年一三回地面を叩く。終わると両人は神前に向かい両手を挙げ鬨【とき】の声をあげて終わる。この所作は、現在では二回目の相撲の所作を省き、ここに三回目の所作をつけて、二回としている。 　この行事は独特の所作を今に伝えるとともに、宮座の遺制を色濃くとどめている。

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