焼玉船(ポンポン船)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/11 04:29 UTC 版)
「焼玉エンジン」の記事における「焼玉船(ポンポン船)」の解説
この種のエンジンは、その簡易さと廉価さによって、明治時代末期から動力化が求められていた小型漁船・渡船などに多く搭載された。 焼玉機関搭載の小型動力船は、リズミカルな独特の爆音を立てて航行することから「ポンポン船」と呼ばれ、漁港や河川ののどかな風物詩として親しまれたが、1960年代までには概ね廃れている。構造的には、2ストロークで、重油(低質重油を除く)を燃料とするものがほとんどを占めていた。 また、太平洋戦争中の日本では、小型漁船のみならず、ある程度の大きさを持った内航航路向け船舶にも焼玉エンジンを使用する例が存在した。日本の戦時標準船(戦標船)のうち、1942年(昭和17年)12月に規格が制定された第二次戦標船の一つで、870総トン級の小型貨物船である2ED型船は、搭載機関を、400PS級の、ディーゼル機関か焼玉機関としており、実際に焼玉機関を積んで製造されたものもある。この戦時設計の粗末な貨物船は、最高速力9.4ノットという低速に過ぎなかった。 当時、高性能なディーゼルエンジンはより重要度の高い軍艦や大型船向けに製造設備を振り向けられたため、小型船向けのエンジン不足は中小の鉄工所や造船所の技術レベルでも製作できる焼玉エンジンで代用せねばならなかったのが実情であった。また輸送船乗員の機関整備担当者には民間の小型船乗組員からの徴用者も多く、焼玉エンジンの扱いに慣熟している一方、普及の進んでいなかったディーゼルエンジンの取扱には不慣れであったことも、焼玉エンジン採用理由の一つになった。 これは同時期、レシプロ式蒸気機関を搭載して建造されたアメリカの戦時標準船・リバティ船と同様、生産上の制約と舶用ディーゼル普及の遅れという事情が退歩した技術を採用させた実例と言える。 焼玉エンジンはディーゼルエンジンに比べ、圧縮比を高くできず重量・容積あたりの出力効率が低い点が欠点ではあったが、圧縮比が低く爆発圧力が低い点は水中騒音が低いことにもつながり、キャッチャーボートの動力として用いる場合鯨に接近を気づかれにくいことから、沿岸捕鯨のキャッチャーボート用としてはディーゼルエンジンよりも好んで用いられた。
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