漸近挙動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/20 21:10 UTC 版)
この変換を再帰的に繰り返し適用すると、初期の各点は離れ離れになっていき、初期に固まっていた領域は一様に均されて全体に広がっていく。このような性質から、料理のパイやうどんなどの生地を押し潰しては折り畳むという作業を繰り返すことによって生地を材料の偏り無く一様にできることの、数理的な説明とも言われる。そもそもの「パイこね変換」の名称も、料理におけるパイの生地を引き延ばして折り畳む操作に由来する。 初期点同士が離れる度合いは指数関数的で、カオスの特徴である初期値鋭敏性を発する。2つの初期点が離れていく度合いを示すリアプノフ指数は、第一リアプノフ指数を λ1、第二リアプノフ指数を λ2 とすれば、λ1 = log 2、 λ2 = −log 2 となる。ここで log は自然対数である。リアプノフ・スペクトルは {λ1, λ2} = {log 2, −log 2} で、最大リアプノフ指数は λ1 = log 2 で正の値を取る一方、全リアプノフ指数の和は λ1 + λ2 = log 2 + (−log 2) = 0 であり、保存系のカオスが持つ性質が示される。 .mw-parser-output .tmulti .thumbinner{display:flex;flex-direction:column}.mw-parser-output .tmulti .trow{display:flex;flex-direction:row;clear:left;flex-wrap:wrap;width:100%;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{margin:1px;float:left}.mw-parser-output .tmulti .theader{clear:both;font-weight:bold;text-align:center;align-self:center;background-color:transparent;width:100%}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{text-align:left;background-color:transparent}.mw-parser-output .tmulti .text-align-left{text-align:left}.mw-parser-output .tmulti .text-align-right{text-align:right}.mw-parser-output .tmulti .text-align-center{text-align:center}@media all and (max-width:720px){.mw-parser-output .tmulti .thumbinner{width:100%!important;box-sizing:border-box;max-width:none!important;align-items:center}.mw-parser-output .tmulti .trow{justify-content:center}.mw-parser-output .tmulti .tsingle{float:none!important;max-width:100%!important;box-sizing:border-box;text-align:center}.mw-parser-output .tmulti .thumbcaption{text-align:center}} 単位正方形上での実際の軌道と初期値鋭敏性の例。青の軌道の初期座標は (0.2 + 10−5, 0.2 + 10−5)。オレンジの軌道の初期座標は (0.2 − 10−5, 0.2 − 10−5)。
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漸近挙動
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保存系の場合と同様に、変換を再帰的に繰り返し適用すると、初期の各点は離れ離れになっていく。すなわち初期値鋭敏性を持つ。しかし保存系の場合と異なり、散逸系の場合は変換を適用するたびに、初期領域は帯状に分割されていき、その帯の面積も減少していく。1つの帯の幅は変換の度に a 倍されるので、n 回変換後の各帯の幅は an となる。帯の数は変換のたびに2倍されるので、n 回変換後はその数は 2n となる。 変換を繰り返すたびに帯は薄くなり、その数は増加していくことになるが、その極限は次のようになっている。f の n 回の反復合成を f n で表し、像 A = f ∞(E) がパイこね変換を無限に適用したときに得られる部分集合を表すとする。このとき、A の極限は実際に存在し、f ∞(A) = A を満たす不変集合である。さらに、A はフラクタルであり、カントール集合の一種となっている。この場合、ハウスドルフ次元 dimH A とボックス次元 dimB A は一致しており、それらの値は dim H A = dim B A = 1 + log ( 1 / 2 ) log a {\displaystyle \dim _{H}A=\dim _{B}A=1+{\frac {\log(1/2)}{\log a}}} で与えられる。 既に述べたとおり f は初期値鋭敏性を持つので、A はストレンジアトラクターでもある。このアトラクターの吸引域は単位正方形全域となる。リアプノフ指数は、x 方向の第一リアプノフ指数は λ1 = log 2、y 方向の第二リアプノフ指数は λ2 = log a となる。リアプノフ・スペクトルは {λ1, λ2} = {log 2, log a} であり、最大リアプノフ指数は λ1 = log 2 で正の値を取る一方、a < 1/2 なので全リアプノフ指数の和 (λ1 + λ2 = log 2 + log a) は負となる。これらは散逸系のカオスの性質の1つである。 上記の形式のパイこね変換による A は古典的な3分割方式のカントール集合とは一致しないが、3分割のカントール集合を与える形式も考えられる。次の形式のパイこね変換では、n → ∞ で y 方向は3分割のカントール集合に厳密に一致する。 ( x n + 1 , y n + 1 ) = { ( 2 x n , y n / 3 ) 0 ≤ x n ≤ 1 / 2 ( 2 x n − 1 , y n / 3 + 2 / 3 ) 1 / 2 < x n ≤ 1 {\displaystyle (x_{n+1},\ y_{n+1})={\begin{cases}(2x_{n},\ y_{n}/3)&0\leq x_{n}\leq 1/2\\(2x_{n}-1,\ y_{n}/3+2/3)&1/2<x_{n}\leq 1\end{cases}}} または、折り返しで「折り畳み」の操作を行う形式の場合では、次の形式の変換で3分割のカントール集合に厳密に一致する。 ( x n + 1 , y n + 1 ) = { ( 2 x n , y n / 3 ) 0 ≤ x n ≤ 1 / 2 ( 2 − 2 x n , 1 − y n / 3 ) 1 / 2 < x n ≤ 1 {\displaystyle (x_{n+1},\ y_{n+1})={\begin{cases}(2x_{n},\ y_{n}/3)&0\leq x_{n}\leq 1/2\\(2-2x_{n},\ 1-y_{n}/3)&1/2<x_{n}\leq 1\end{cases}}}
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