法的な権限に関する検討
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 16:07 UTC 版)
1999年の921大地震後に制定され、当時有効であった法律に、災害防救法がある。この法律では、各地方政府に対し、管轄区域内で発生した災害には第一線で対処する責任があるとしつつ、「直轄市または各県市の政府が災害に対応できない場合には、当該災害に対処する主務官庁が積極的に人員を派遣し、直轄市または各県市の政府からの要求があった場合には、人員を調整し支援要員を派遣する(災害防救法第34条)」「当該災害に対処する主務官庁が行う防災救助の権限および責任は、防災救助活動の支援および対応を含み、災害の範囲が海域に及ぶ場合、二つ以上の直轄市および県市の行政区域に跨がる場合ならびに災害が重大で、かつ直轄市または各県市の政府が直ちに調整および対処できない場合である(災害防救法第3条)」「当該災害に対処する主務官庁の長は、重大な災害が発生しまたは発生するおそれがある時、その災害の規模、性質、被害状況、各方面への影響および緊急対応措置などの状況をみて、中央災害対応センターの設置時期および等級を決定しなければならない。設置した後は、中央災害防救会報の召集人に速やかに報告し、召集人は指揮官を指定する(災害防救法第13条)」と、政府の役割を定めている。しかし、増水により深刻な被害が発生した濁水渓、北港渓、朴子渓、八掌渓、曽文渓または高屏渓といった河川は政府直轄の河川であったにもかかわらず、浸水被害が生じるまでの時間が短く、政府は災害発生後の支援の協力や救援の人員派遣にとどまった。 また、憲法増修条文の規定では、「総統は、国家あるいは国民が緊急事態や危険な状況に遭遇するのを防ぎ、財産・経済上の重大事に対応するため、行政院院会(閣議)の決議を経たうえで緊急命令を発令することができ、必要な措置を採る(憲法増修条文第2条)」とされており、王金平立法院長や中国国民党の立法委員グループ、一部の県市の首長および野党民主進歩党からも、より柔軟な行政権の行使を可能とする緊急命令の発令が公に提起されたが、必ずしも各界からの意見は一つとならなかった。 国軍の指揮の観点から見ると、総統は中華民国の陸海空軍を統率すると中華民国憲法に規定されており、国内の災害に対し軍を動員できる唯一の者と言える。行政府の長である行政院長や風害を所管する内政部、水害を所管する経済部、土石流災害を所管する農業委員会、陸上交通を所管する交通部などの省庁の長などは、三軍を指揮する権能を持ち合わせていない。ここで、災害救援が国軍の主要な責務となるのかどうか、または軍隊の災害救援の設備が専門機関よりも優れているべきか否かといった点が議論となった。しかし、国軍は政府で唯一の短時間で大量の人員および器具を動員できる組織であることなどから、翌2010年に国防部と内政部が共同して「国軍による防災救助への協力に関する法律」が制定され、国軍の部隊が地方政府の首長の指揮を受け、災害救助に協力することとされた。
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