歌舞伎に由来する語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 07:53 UTC 版)
大向うをうならす(おおむおうを うならす) - 大向うに座る目の肥えた芝居の見物客の賞讃を博する。転じて、人々の人気を集める。 差金(さしがね) - 舞台に舞い踊る蝶・鳥・人魂などの小道具は、長い黒塗りの竿の先に差した針金にそれらを吊るし、後見や黒衣(後述)がこれを舞台上の物陰から操作したが、この小道具一式を差金と呼んだ。そこから意味が転じて、陰で人をそそのかしたり、入れ知恵したりする者がいると思われる場合に、「あれは誰々の差金に違いない」などと言い表すようになった。 黒衣(くろご) - 表には出ないものの、なくてはならない存在。縁の下の力持ち。ただし「黒子」「くろこ」はともに誤用が定着した慣用で、正しい表記は「黒衣」読みは「くろご」。黒装束に黒頭巾を着用し、舞台上で役者の介添や小道具を操作する者のことをいう。 黒幕(くろまく) - 歌舞伎の黒幕は通常夜を表すために用いるが、人形浄瑠璃の黒幕は舞台を操る者をその陰に隠すために用いる。そこから歌舞伎でも、舞台裏から影響力を行使して舞台を操る興行主・金主(投資者)・芝居茶屋などのことを「黒幕」と呼ぶようになった。そもそも黒という色に悪の意味を絡ませるのは近代になってからの連想で、当時はむしろ御公議の「幕府」「幕閣」や大相撲の「幕内」などの語にみられるように、「幕」という語には「中に立ち入り難く、様子が見えにくい」という語感があった。ここから「外部の者には実情がよく分からない」という意味で、今日の「政界の黒幕」のような使われ方がされるようになったと考えられている。 暗闘(だんまり) - 暗桃とも。登場人物が暗闇のなかにいるという設定で無言で立ち回りを演じること。転じて黙秘することを「黙り」と書いて「だんまり」と呼ぶようになった。 二枚目(にまいめ)・三枚目(さんまいめ) - 一座を構成する配役の番付の上で、思慮分別をわきまえた貫禄のある役を務める立役の看板役者を「一枚目」、美男で人気が高い若衆役を務める役者を「二枚目」、面白おかしい役を務める道外方を「三枚目」に掲げていたことが語源。現代でも日常的に用いられる言葉として残っている。 幕切れ(まくぎれ)・大詰(おおづめ) - それぞれの場(幕)の終わりに引き幕が閉まることを幕切れ、江戸歌舞伎の一番目の最後の幕を大詰と言った。現在でも「さしもの事件もあっけない幕切れとなった」、「ペナントレースも大詰めを迎えた今週」のように使用される。 千両役者(せんりょうやくしゃ) - 名優と呼ばれる歌舞伎役者の収入は1,000両を超えたことから、転じて素晴らしく活躍した人の意味。女形では初代芳澤あやめが正徳年間(1711年 - 1715年)に、立役では二代目市川團十郎が享保6年(1721年)に、初の年給1,000両を得たという。 十八番(おはこ、じゅうはちばん) - 市川家が得意演目の歌舞伎十八番の台本を桐の箱に入れて保管したことが語源となっている。 歌舞伎症候群(かぶきしょうこうぐん) - 常染色体優性遺伝の遺伝疾患。特有の切れ長の目が歌舞伎役者の化粧を髣髴とさせることから命名された。
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