欧州紀行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 07:26 UTC 版)
(ジュネーヴにおける数時間)では、チューリッヒ経由でパリへ向かう飛行機が天候の加減でジュネーヴに止まり、肌寒い街やジュネーヴ湖にそそぐローヌ河の中の小島・イル・ド・ルソオで見た白鳥などの風景が綴られている。 (パリ)では、メドラノの曲馬の曲芸師の危険な技を見ながら「肉体と精神」の極限状態について考察している。また、在外事務所のS氏家族とフォンテエヌブロオへ春のピクニックに行き、そこで見た巨石を見て「日本の庭のやうである」と観察している。 (ロンドン及びギルドフォード)では、パリで木下恵介、黛敏郎と一緒に観たレハールのオペラ『微笑の国』のことや、ロンドンの劇場で『ビリー・バッド(英語版)』『からさわぎ』を観たこと、朝日新聞社の椎野と行ったギルドフォードの町の様子が綴られている。 (アテネ及びデルフィ)では、「眷恋の地」ギリシャに到着した感動や喜びを記している。「空の絶妙の青さは廃墟にとつて必須のものである」とギリシャの青空を愛でながら、訪れたアクロポリス、パルテノン神殿、ゼウスの宮居、ディオニューソス劇場を詳細に描写し、ギリシャ建築や竜安寺の美意識について考察したり、デルフィに向かう周遊バスの道中の様子や、美術館で観た馭者像との邂逅の感動、アポロ神殿の眺めが詳細に綴られている。 (ローマ)では、コロセウムや、テルメのローマ国立博物館で観た『ウェヌス・ゲニトリクス』(母のヴィーナス)『踊り子像』『ニオベの娘』『シレーネのヴィーナス』、ボルゲーゼ美術館で観たティツィアーノの絵画や、夜オペラ座で聴いたヴェルディのオペラ『リゴレット』のことなどが綴られている。また、ヴァチカン美術館で観た二つの「アンティノウス像」(胸像と立像)に感動し、アンティノウスの逸話に思いを馳せている。コンセルヴァトーリ宮美術館ではスピナリオの『棘の刺さった少年』を絶賛し、キャピトール美術館では『戦士像』、ヴェネツィア美術館では、グイド・レーニ『聖セバスチャン』などを寸評している。ローマを発つ日に再びヴァチカン美術館に赴き、「アンティノウス」に別れを告げ、ギリシャ彫刻について考察している。三島が創作した詩劇アンティノウス「鷲ノ座――近代能楽集ノ内」、短編小説「アンティノウス」(未完の草稿)も付記されている。
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