楕円翼形の主翼
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 23:53 UTC 版)
「スーパーマリン スピットファイア」の記事における「楕円翼形の主翼」の解説
上昇力だけでは戦闘機と渡り合うことはできないという問題を解消するため、1934年に設計陣は楕円翼形を採用した。抗力を生むことを避けるため、主翼の厚みは薄くする必要があったが、巧妙な設計によって薄い翼でも機関銃とその弾薬、そして、格納式の引き込み脚の搭載を可能とした。 この楕円翼形の採用について、ミッチェルは1932年に初飛行したハインケル He 70の翼形をコピーしたと非難されることがあった。設計陣の航空力学担当であったシェンストーンは、戦後、これを否定した。 我々スーパーマリンが、楕円翼形をドイツのハインケル He 70 輸送機から盗用したと示唆された。これは、そうではない。我々の翼形は、ハインケルのそれよりも非常に細く、異なる翼型を持っていた。いずれにせよ、異なる目的のために設計された翼形をそのままコピーすれば、駄作機にしかならない。 — Beverley Shenstone、Spitfire: A Documentary History 翼付け根で13%、翼端で6%の翼厚・翼弦比率の実現に向いていたため、翼型は、NACA 2200シリーズを使用した。横方向の安定性に対応するため、上反角は6度とされた。 翼端のパーツのみを交換することで、飛行特性の変更が可能。主に高々度用に延長翼、低高度用に切断翼が使用されたが、型式のHF、LF等とは直接関係がない(これらの型式は搭載されたエンジン(スーパーチャージャーの設定高度)による。 標準翼 延長翼:高々度飛行のために翼面積を増やすために主としてMk. VIIで採用された。 切断翼:低高度でのロールレートと速度増加が目的。戦争後期に多く使用された。 主翼の特徴は、革新的な翼桁を延ばした設計であった。5本の角管が翼幅に従って細くなり、翼端に近づくにつれ角管を減らした。そのうちの2本は結合され、軽量でありながら強固な主桁となった。引き込み脚構造は、主桁の内部に軸を設け、真横ではなく、やや後ろ方向へ車輪を収容した。これが着陸時に主桁にかかる曲げ荷重を軽減することから、車輪間の幅の狭さは、許容範囲だと考えられた。 楕円翼の採用は生産性の悪化を招いたものの、捻り下げや戦闘機としては極めて低い翼厚比と併せて、大迎え角での誘導抵抗の減少、翼端失速の防止、翼内武装の充実、高速といった長所をスピットファイアに与えた。後期モデルの翼は、これよりももっと薄く、まったく異なった構造になっている。
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