柳屋一統
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 01:08 UTC 版)
「風の市兵衛シリーズの登場人物」の記事における「柳屋一統」の解説
柳屋 稲左衛門(やなぎや いなざえもん) 日本橋本石町の薬種問屋。元は、川越の江戸町で薬種問屋を営んでいたが、30歳の時に流行病で妻と2人の子を亡くし、その悲しみを埋めるかのように商売に没頭していった。そして、名門旗本である石井彦十郎の威光を利用して、15年前に江戸に進出した。 先祖は、室町時代に渡来した中国商人。そのため、中国商人登秀元(とう しゅうげん)に信頼され、ロシア船との密貿易を仲介してもらった。そして、石井を通じて手に入れた公儀の内情をロシアに売り、代わりに大量の阿片を手に入れる密貿易を行なって、江戸市中に売りさばいていた。 市兵衛と頼之が長治の元を訪れたと知り、目付の捜査が迫っていることを悟ると、宗七や稲左衛門と共にロシアに逃れようとしたが、市兵衛や信正らに追いつかれてしまう。そして、市兵衛に斬りかかり、逆に斬られて絶命した。 宗七 柳屋に先々代から奉公している手代で、間もなく60歳になる稲左衛門の腹心。 柳屋が店じまいした後は、稲左衛門がロシア船に乗り込むのを確認したら、出家して諸国を廻るつもりだった。しかし、稲左衛門が市兵衛に斬られたとき、後を追って自害した。 石井 彦十郎(いしい ひこじゅうろう) 寄合席4000石の旗本で、道久の幼馴染み。道久が遺した借金手形に裏書きしていた。借金の調査のために訪れた市兵衛には、女遊びのためだと語った。 稲左衛門によって阿片と3人の中国女の虜になっており、稲左衛門のために旗本名家の名を利用させてやったり、ロシアに売り渡す公儀の内情を稲左衛門が手に入れられるよう計らったりしていた。道久が目付の密偵だと気づくと、長治や春五郎と図って借金手形を捏造し、道久と絵梨を阿片の過剰摂取によって殺害して、遺体を心中に見せかけて川に投棄した。 目付の手が迫ってくると、稲左衛門らと共にロシアに逃れようとしたが、信正に捕らえられる。その後、改易と切腹を命じられた。 翠(すい)・楊(よう)・青(せい) 3人とも10年前に売られて日本にやってきた。3年前、登秀元から柳屋稲左衛門に取引の礼として譲られ、さらに阿片の密貿易に石井を巻き込むため、彼に贈られた。 3人とも妖艶な中国人の女で、恐るべき中国武術の遣い手。渋井が柳屋の寮に忍び込んだ際は、それを発見して斬り捨てた。石井がロシアに脱出するための旅にも同行し、追いついてきた市兵衛らに襲いかかった。しかし、翠は市兵衛に、楊は弥陀ノ介に殺された。青も弥陀ノ介に斬られ、川に落ちて流された。 長治(ちょうじ) 神田多町にある岡場所の店頭(たながしら)。柳屋から手に入れた阿片を、各地の岡場所の遊女や客に売りさばいていた。道久と絵梨、そして丹波の殺しにも加担した。 絵梨に密貿易のことを漏らしたり、すぐに仕掛けがばれるような中途半端な殺しを繰り返したりしたことで、稲左衛門の信用を失い、首を絞められて殺された。 春五郎(はるごろう) 石井の紹介で、市兵衛が来る前に高松家に入っていた渡り用人。石井や長治と図って、50両の借金を作ったように偽装した。借金について聞きに来た市兵衛に、仲間と共に暴行を加えようとしたが、逆に痛い目に遭わされてしまう。事件発覚後、死罪となった。 中丸屋 伝三郎(なかまるや でんざぶろう) 日本橋蛎殻町の金貸し。石井や長治の依頼で道久の借金手形を偽造した。事件発覚後、死罪。 平沢 角之進(ひらさわ かくのしん) 天文方。稲左衛門一味がアヘンと金と女で籠絡し、完成したばかりの伊能図(大日本沿海輿地全図)を求めた。角之進はそれを了承し、伊能図が難しい場合には蝦夷と樺太の沿海を描いた図布を渡すことを約束した。事件発覚後、職を解かれて家禄没収。 ブラゾフ ロシア船のカピタン。越後沖に現れては稲左衛門と密かに取引し、阿片を大量に売り渡している。そして、さらなる阿片やロシア皇帝への謁見と引き換えに、伊能図を求めた。
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