枯草菌とは? わかりやすく解説

枯草菌

読み方:こそうきん
別名:バチルス菌バチラス菌Bacillus subtilis
英語:バチルス・サブチリスバチルス・サブティリス

バシラス科バシラス属真菌好気性の桿菌であり、芽胞形成する納豆菌が枯草菌の一種であり、醪(もろみ)にも多数の枯草菌が含まれることが知られる

納豆製造においては、枯草菌の芽胞が熱に非常に強い点を活かし煮沸によって枯草菌の芽胞以外を殺菌するという手段がとられている。納豆の糸・粘りも枯草菌の性質によるところが大きい。

最近では枯草菌の芽胞性質を「生きて腸まで届く」整腸として活用した商品開発されている。

こそう‐きん〔コサウ‐〕【枯草菌】

読み方:こそうきん

好気性細菌の一。大気枯れ草下水土壌中に存在する大形桿菌(かんきん)。病原性はない。鞭毛(べんもう)をもち、炭水化物分解して酸を作る


枯草菌[Bacillus subtilis]


枯草菌

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/25 00:57 UTC 版)

枯草菌
枯草菌とその芽胞(緑)
分類
ドメイン : 細菌 Bacteria
: フィルミクテス門
Firmicutes
: バシラス綱 Bacilli
: バシラス目 Bacillales
: バシラス科 Bacillaceae
: バシラス属 Bacillus
: 枯草菌
Bacillus subtilis
学名
Bacillus subtilis (Ehrenberg 1835) Cohn 1872 (Approved Lists 1980)

枯草菌(こそうきん、: Bacillus subtilis)は、土壌や植物に普遍的に存在し、反芻動物やヒトの胃腸管に存在するグラム陽性カタラーゼ陽性の細菌糖化菌)である。片仮名表記ではしばしばバチルス・サブティリス[1]バシラス・サチリス[2]が使用される。学名のラテン語をそのままカナ音写すると「バキッルス・スプティーリス」に近い。バキッルスが小さな棒、スプティーリスが細い、という意味である。

分布と特徴

土壌中や植物体に普遍的に存在する。空気中に飛散している常在細菌(空中雑菌)の一つでもある。

0.7-0.8 × 2-3 µmの大きさの好気性グラム陽性桿菌である。中温性で、最適生育温度は25-35℃である。

芽胞を形成する。この形態となったとき、様々な環境ストレスや飢餓に対して耐久性を有する。その他の耐久機構として、外部DNAを取り込み自己ゲノムと相同組換えすることによって形質転換する能力 (自然形質転換能 (natural competence)) を持つ。これらの耐久機構の発現には長い時間を要する。枯草菌は素早く適時に環境ストレスに対応するため、ストレスシグマ因子などの環境ストレス応答機構を有する。この応答機構により熱、酸、塩基、エタノールなどへの暴露、およびグルコースリン酸の飢餓に耐性を示す[3]

芽胞は熱や消毒薬などに対しても耐久性を示す。このため、一般的な消毒手法でも除去しきれないことがあり、培地や食品の汚染(コンタミネーション)の原因になることがある。ヒトに対する病原性を持たないため医学上問題視されることは少ないと考えられているが、菌血症、心内膜炎、呼吸器感染症、食中毒、眼感染症をごく稀に引き起こす[4]

などの枯れた草(特にイネ科草本の枯死した茎葉が多く用いられる)を水に浸けて煮沸すると、ほとんどの微生物はその熱によって死滅するが、枯草菌の芽胞は高い耐熱性を持つため生き残る。その後、浸出液を放置すると芽胞が発芽して、枯草菌が優占して繁殖する。枯草菌は好気性であるため浸出液の液面で増殖し、また菌膜(バイオフィルム)を産生して液面を覆うことが多い。この現象は、ルイ・パスツールが白鳥の首フラスコによる実験で微生物の自然発生説を否定した後、ジョン・ティンダルによってその例外的な現象として発見された。

この性質を利用して自然環境から枯草菌を分離することが可能である。また稲わらを用いた伝統的な納豆は、蒸すか煮た大豆を煮沸した稲わらで包んで製造するが、これは煮沸によって雑菌が死滅し、枯草菌の一種である納豆菌Bacillus subtilis var. natto)の芽胞だけが生き残る性質を利用したものである。

煮沸後、一晩放置して枯草菌が増殖した浸出液を再び煮沸すると、枯草菌のほとんどは芽胞ではなく通常の菌体として増殖しているため、一回の煮沸では除去できない枯草菌のほとんどを加熱殺菌することが可能である。この滅菌方法を間欠滅菌と呼ぶ。通常は、間に一晩静置をそれぞれ挟んで煮沸を三回繰り返して行われる。この他、枯草菌芽胞を完全に除去するには、オートクレーブ滅菌(121℃、2気圧、15分以上)や乾熱滅菌(180℃、30分以上など)、濾過滅菌など、「滅菌」と呼ばれるレベルの殺菌処理が必要である。

歴史

1835年にクリスチャン・ゴットフリート・エーレンベルクによって発見された[5]。最初に発見されたとき、Vibrio subtilisと名付けられた。Ferdinand Cohnによって現在の学名Bacillus subtilisが生まれたのは1872年であった[6]。和名の枯草菌は、枯れた草の表面などからこの細菌が分離されることが多いために付けられた。Bacillus uniflagellatusBacillus globigiiBacillus nattoシノニムである。最初に研究対象となった細菌の一つである。現在でも細胞の発生と分化のモデル生物に一般的に用いられている。

利用

ある種の枯草菌が納豆菌Bacillus subtilis var. natto)として納豆の製造に用いられるほか、一部の枯草菌が作るサチライシンなどのタンパク質分解酵素洗剤に利用されるなど、代表的な有用微生物の一つに挙げられる。

煮沸した枯草の浸出液を放置して枯草菌を増殖させた後、池などから採取された水を加えると、細菌を餌とするゾウリムシなどの繊毛虫類がよく増殖する。そのため、これらの原生動物の分離培養にも用いられる。

分子生物学分野では、枯草菌はグラム陽性桿菌のモデル生物として扱われている。1997年には枯草菌ゲノムの解読が完了しており、遺伝子研究や遺伝子組換えによる有用微生物の開発にも用いられている。

参考文献

  1. ^ 日本細菌学会用語委員会編『微生物学用語集 英和・和英』南山堂、2007
  2. ^ 日本細菌学会用語委員会編『英和・和英微生物学用語集』第3版、菜根出版、1985
  3. ^ Bandow, J.E., H. Brötz, M. Hecker. (2002 January;). Bacillus subtilis Tolerance of Moderate Concentrations of Rifampin Involves the sigma(B)-dependent General and Multiple Stress Response.”. Journal of Bacteriology. 184 (2): 459-467.. PMC 139561. PMID 11751823. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11751823. 
  4. ^ Pathogenic Bacteria Database
  5. ^ Christian Gottfried Ehrenberg (1835). Physikalische Abhandlungen der Koeniglichen Akademie der Wissenschaften zu Berlin aus den Jahren 1833-1835. pp. 145-336 
  6. ^ Cohn, Ferdinand (1872). “Untersuchungen über Bacterien”. Beiträge zur Biologie der Pflanzen. 1. pp. 127-224. https://books.google.com/books?id=wnyHvEtfRrQC&pg=RA1-PA127 

「枯草菌」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



枯草菌と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「枯草菌」の関連用語

枯草菌のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



枯草菌のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
新語時事用語辞典新語時事用語辞典
Copyright © 2024 新語時事用語辞典 All Rights Reserved.
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
微生物管理機構微生物管理機構
Microbes Control Organization Ver 1.0 (C)1999-2024 Fumiaki Taguchi
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの枯草菌 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2024 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2024 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2024 GRAS Group, Inc.RSS