東芝うつ病事件
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東芝がうつ病で休職していた元女性社員を解雇したが、解雇された元社員が業務による労災であるとして、2004年11月に解雇の無効と慰謝料の請求を求めて起こした裁判。この元社員の職場では、半年間に同僚が2名自殺している。東京地裁は「原告が平成13年4月にうつ病を発症し,同年8月ころまでに症状が増悪していったのは,被告が,原告の業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して心身の健康を損なうことがないような配慮をしない債務不履行によるものであるということができる。」とし、元社員の業務が相当に過重であり、業務以外に鬱病を発症させる原因は無く、また東芝に安全配慮義務違反があるとして、当該解雇の無効と、東芝に対し未払い賃金や慰謝料等の支払いを命じた(2008年5月)。この事件においては、東芝は、会社ぐるみで口裏を合わせる等、原告の業務内容を隠ぺい工作したり地裁判決後、東芝広報室が「主張が認められず、大変遺憾。控訴の手続きを取った」と発表したりと、徹底的に争う姿勢を見せた。また、原告のホームページによると、当時東芝の寮に住んでいた原告に対し組織ぐるみの嫌がらせも行われた。 控訴審中の2009年5月に、この元社員は国に労災認定されたが、労災認定された後も、東芝は、「業務上に当たらない」と書かれた東芝の産業医の意見書を提出し、徹底抗戦を続けた。しかし、東京高裁も業務とうつ病の因果関係を認め解雇を無効とし、東芝は再び敗訴した。 一方、高裁判決において、原告が精神的健康に関する情報を東芝に申告しなかったことをもって過失相殺がなされたため、原告はこれを不服とし、最高裁に上告した。最高裁は、労働者が過重な業務によって鬱病を発症し増悪させた場合において,使用者の安全配慮義務違反等を理由とする損害賠償の額を定めるに当たり,当該労働者が自らの精神的健康に関する情報を申告しなかったことをもって過失相殺をすることができないとし、二審判決を破棄、審理を東京高裁に差し戻し、原告の全面勝訴が確定している(最高裁判決平成26年3月24日第2小法廷)。 この事件は、企業のメンタルヘルス対策に与える影響が非常に大きい事件とされて注目されている。
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