東京高検が死刑適用を求め上告
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/08 08:43 UTC 版)
「国立市主婦殺害事件」の記事における「東京高検が死刑適用を求め上告」の解説
詳細は「福山市独居老婦人殺害事件#連続上告」を参照 刑事訴訟法第405条では、上告理由は憲法違反および判例違反に限定されている。そのため、「量刑不当は適法な上告理由に当たらない」とされていることから、当時、「検察は無期懲役判決への上告に慎重な姿勢を取っている」とされていた。東京高等検察庁も当初、控訴審判決について「殺害された被害者は1人で、被告人に殺人の前科もない」として、いったんは上告しない方針を決めていた。 しかし、土肥孝治(検事総長)は死刑を回避した同判決について、「被告人Oには真摯な反省の色が見られない」と疑問を示し、上告断念の方針を決めていた東京高検に対し異論を唱えた。これを受け、東京高検(次席検事:甲斐中辰夫)は同判決について、「極めて悪質かつ残虐な犯行で、被告人Oに更生は期待できない。最高裁が連続射殺事件の判決(参照:永山基準)で示した死刑適用の要件に照らしても、死刑をもって処断すべき事案だ」として、同年5月26日に最高裁へ上告した。 その背景にあった出来事は、同年2月に広島高等裁判所が福山市独居老婦人殺害事件(被害者1人の強盗殺人事件:以下「福山事件」)の被告人(過去に強盗殺人事件を起こして無期懲役刑に処され、仮釈放中に福山事件を再犯)に対し、「反省悔悟の情が認められる」として言い渡していた無期懲役判決だった。この福山事件の控訴審判決を受け、堀口勝正(最高検察庁刑事部長)は土肥に対し「(無期懲役の仮釈放中に強盗殺人を犯した被告人に対し、再び無期懲役を適用した判決は)度を超している」「国民が納得できない」と進言し、土肥もそれに同意したため、広島高等検察庁は無期懲役判決事件に対する量刑不当を理由とした上告(当時:戦後2件目)に踏み切った。この異例の上告以降、検察当局は札幌両親強盗殺人事件や本事件など、高裁が無期懲役判決を言い渡した4件の強盗殺人事件(いずれも死刑求刑)について、相次いで最高裁へ上告した(連続上告)。 上告対象となった5事件の被害者はいずれも1人 - 2人で、死刑と無期懲役を分けるボーダーラインとされていたが、検察当局は当時、下級審が死刑適用を回避する傾向を疑問視し、「近年の裁判所の量刑は軽すぎ、国民感情からかけ離れている」と訴えた。また、「判例違反」の理由については「『永山基準』が示されて以降、最高裁が第一審の死刑判決を維持したか、無期懲役の判決を破棄して死刑を言い渡した控訴審判決を是認した事例は、50件(54人)に達している。そのいずれの判決も、罪質・動機などが極めて悪質な場合は、犯行後の被告人の主観的事情(反省悔悟や改善可能性)で酌むべき事情があっても、他に刑を減軽すべき特段の事情が認められないとして死刑を適用している。それらの判例から見るに、『永山基準』は『死刑選択に当たり、犯罪行為自体の客観的な悪質性(犯罪の結果・影響など)に主眼を置くべきであり、主観的・個別的な事情(被告人の反省など)はさほど重視すべきでない』という形で死刑選択の基準を示し、それが裁判上の指針として定着しており、原判決はそれに反している」と主張した。
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