日本語との対応関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 09:39 UTC 版)
琉球諸語(琉球方言)と日本語の間には、母音・子音に一定の対応関係がある。短母音では、日本語の/o/は、琉球諸語(琉球方言)圏全域で/u/になっており、また喜界島南部や沖永良部島、与論島、沖縄諸島、八重山列島の一部、与那国島では/e/は/i/になり3つの短母音を持つ。奄美大島・徳之島・喜界島北部では、日本語の/e/は中舌母音/ï/になり4つの短母音を持つ。宮古列島や八重山列島(与那国島除く)では、日本語の/e/が/i/になる一方で日本語の/i/は中舌母音/ï/になり4つの短母音を持つ。また、連母音が変化した/eː/や/oː/が与那国島を除くほとんどの地域にある。次に、日本語と琉球諸語(琉球方言)諸方言の間の母音の対応関係を示す。 日本語奄美大島徳之島方言沖永良部・与論・沖縄語宮古語八重山語与那国語あ a あ a あ a あ a あ a え e いぅ ï い i い i い i お o う u う u う u う u い i い i い i いぅ ï い i う u う u う u う u う u 日本語奄美方言沖縄方言宮古方言八重山方言与那国方言あい ai ëː、eː eː aï、ai ai ai あえ ae ëː、eː eː ai ai ai あお ao oː oː oː、au oː、au au あう au oː oː oː au u おえ oe ïː、ëː iː、eː ui ui ui 例えば首里方言では、 雨(あめ)→アミ(ʔami) 舟(ふね)→フニ 雲(くも)→クム 灰(はい)→フェー 前(まえ)→メー 青い(あおい・終止形)→オーサン(ʔoːsan) 買う(かう・終止形)→コーユン などの対応関係をなす。 サ行とタ行では、大部分の地域でu→ïまたはu→iの変化が起こったため、日本語のチとツ、シとスが統合する傾向がある。 北琉球諸語ではo→u、e→i(あるいはï)の狭母音化に伴い、元々のイ段・ウ段の子音は、[kʔumu](雲)、[kʔimu](肝)のように無気喉頭化音に変化した。ただし与論島や沖縄中南部ではその後、喉頭化音による区別を失った。 子音では、多くの地域で、日本語の語頭のハ行子音が琉球諸語(琉球方言)ではpまたはɸ(F)になっている。日本本土では、ハ行は奈良時代以前にp、平安時代から室町時代まではɸであって、琉球諸語(琉球方言)で古い発音を残している。pを残しているのは奄美大島佐仁・喜界島北部・与論島・沖縄本島北部の名護周辺部・伊江島・津堅島・久高島・宮古語(一部除く)・八重山語で、沖縄中南部や与那国島はほとんどhになっている。一方、語中のハ行子音は、日本語と同様にp→wの変化(ハ行転呼)が琉球諸語全体で起きている。 南琉球諸語では、bata(腸→腹)のように、日本語・北琉球諸語のw(ワ行)にbが対応している。また、dama(山)のように、日本語のヤ行子音がdになっている例が、与那国語にある。与那国語ではsagi(酒)のように、語中子音の濁音化が見られる。喜界島と与那国島には鼻濁音ŋがある。 主に沖永良部与論沖縄北部諸方言で、haːmi(亀)のように、日本語のカ・ケ・コの子音kがhに変化している。一方でキは、チヌー(昨日)のように、喜界島南部・沖永良部島和泊・伊江島・伊是名島・沖縄本島中南部・伊良部島などではʧi(チ)になっている。宮古語・八重山語では日本語のクがfuまたはɸuとなりフと同音になる。 北琉球諸語では母音iの直後の子音t, s, k, n, rおよびその濁音に口蓋化が起きた(iC→iCʲ。Cは任意の子音。)。例えば徳之島の浅間ではイキャー(烏賊)、イチャー(板)、ミージュ(溝)のように子音が変化している。 日本語のリは、tui(鳥。沖縄語の例)のように、沖縄諸島や宮古島などではrが脱落する。 awaは、喜界島や沖縄本島以南ではaaまたはa、他の奄美語方言ではooまたはoとなる(例:「泡盛」→「アームイ」)。 オキナワは、これらの法則に沿った音変化により、沖縄本島中南部ではウチナーとなる。
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