日本学術会議の改組
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2020年10月、菅義偉内閣総理大臣による日本学術会議会員の任命拒否問題が発生すると、科学技術政策担当大臣として日本学術会議の組織の見直しを担当した。10月23日には日本学術会議の梶田隆章会長と面会し、「国の予算を投ずる機関として、発揮すべき役割を適切に果たし、国民に理解される存在であるべきだ」「未来志向で学術会議のあり方をお互いに考えていきたい」と述べた。会談においては、提言機能や情報発信力、会員の選考方法などについて学術会議が自ら検証することを要請し、梶田会長が報告することで合意した。井上自身、11月以降に若手や女性、地方在住など幅広く会員から意見を聞きとるとした。一方、任命を拒否された6人は同日、日本外国特派員協会で意見表明し、「学術への介入で違法だ」などと訴えた。 10月29日、日本学術会議を視察した際には、梶田会長に会議の運営や形態を巡る再検討への協力を要請し、「会員の多様性をより深めるべきだという意見は学術会議も首相も同じだ。改善策を取りたい」と語った。 11月2日の衆議院予算委員会では、大塚拓衆議院議員の質問に対して、学術会議が「既得権益化しているようなことがあれば、検証・見直ししていく」と述べた。 11月17日の参議院内閣委員会では、山谷えり子参議院議員の質問に対して、研究成果が民生と軍事の両面で使われるデュアルユース(軍民両用)について、「時代の変化に合わせて冷静に考えていかなければならない課題だ」と語り、こうした考えを梶田会長にも伝えたことを明らかにした上で、「まずは学術会議自身でどう検討をされるのか、待っている」と述べた。これについて会見では、「見直しを要請したわけではない」「デュアルユースについても冷静に考えなければいけないのではないかという考えを述べた」と明らかにしている。 11月26日、梶田会長との会談では、「学術会議の役割を果たすため、しっかり組織のあり方も見直してもらいたい」と述べ、その選択肢の一つとして、非政府組織や民間団体といった国から独立した機関としてのあり方を検討するよう提案した。一方で、組織の見直しによって国の機関でなくなったとしても、「政府からの予算や人員の支援がまったくない形はふさわしくないのではないか」としている。 12月6日の産経新聞インタビューでは、「『ナショナル・アカデミーとしての権能を維持したい』という方針は私も賛成だ。国としてもアカデミアの中心となる存在は必要だからだ」「日本のアカデミアと政府が対立することは国民のためにも良いことではない。未来志向でしっかりした形を出していくことが大事だ」とした上で、組織について、「ナショナル・アカデミーが有すべき権能を発揮させるためにどういう形態が良いのか検討してほしい。民間か、独立行政法人か、あるいは今のような国の行政機関かという話が先ではなく、まず権能ありきだと思っている」と語った。また、デュアルユースについても、「時代の流れがあって、なかなか(軍事用と民生用の研究を)単純に切り分けるのが難しい状況になっている。そこをどうすべきか、まずは学術会議に考えていただきたい」との考えを示した。 12月11日、自民党のプロジェクトチームから、日本学術会議を政府から独立した法人格へ変更するよう求める提言を受け、16日には梶田会長から、政府からの独立には慎重な姿勢を示す中間報告を手交された。その際には「年内には政府として一定の道筋を示したい」と記者団に語ったが、24日には改めて梶田会長と会談した上、「2ヵ月余りの検討ではどうしても時間が限られていた」として、翌4月以降に最終報告を受けることで合意した。 2021年4月7日、梶田会長から「現行の国の組織というのが最も望ましい」とする組織形態の改革案を受け取り、「国の組織のまま残るのであれば、責任をしっかり果たしてもらいたい」と伝えた。22日には、梶田会長から日本学術会議を現状の体制のまま維持するよう求める最終報告書を受領した。 2021年5月20日、政府の総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員懇談会において、日本学術会議のあり方を議論する会合を開始し、「学術会議が国民に期待され、役割を果たしていくための改革議論が深まることを期待している。それらを踏まえ、最終的に政府の方針を責任をもって示す」と述べた。
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