日本国特許法におけるソフトウェア特許
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/13 15:16 UTC 版)
「ソフトウェア特許」の記事における「日本国特許法におけるソフトウェア特許」の解説
従来から、ソフトウェア関連の発明について、特許法上問題となっていた。発明には、大きく分けて、物の発明と方法の発明に大別される(特許法第2条3項)。民法上、物は、有体物に限られているため、民法の特別法である特許法におけるソフトウェアは、物の発明であるか方法の発明であるのか問題となっていた。実務上は、ソフトウェアが格納された記録媒体という物の形式でソフトウェアに関する発明について、保護していた。 このような状況にかんがみ、平成14年の特許法改正において、ソフトウェアに関する発明を条文上、物の発明として取り扱うことを明示する法改正が行われた。(なお、同時に、商標法においても、ダウンロードして使用するソフトウェアと、ASPとは、それぞれ、商品商標と役務商標として、取り扱う法改正が行われた。) 参考文献「ネットワーク化に対応した特許法・商標法等の在り方について」 ソフトウェア特許が成立するためには、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることを要する。ここで、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている」とは、ソフトウェアがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置(機械)又はその動作方法が構築されることをいう(このコンピュータ・ソフトウェアに関する特許審査基準の正当性は、平成9年(行ケ)第206号(東京高判平成11年5月26日判決)において言及された)。 さらに、特許明細書においては、単なる発明のアイディアだけではなく、どのようにその発明を実施できるかを技術的に正確かつ詳細に記載しなければならない(公開代償説)。したがって、特許出願の願書に添付する明細書(特許法第36条第2項)には、上記ソフトウェアの処理について、実施可能要件を満たすように留意して記載する必要がある(特許法第36条第4項1号)。 現在の審査手続き(プラクティス)においては、特許要件として、進歩性(特許法第29条2項)を有する必要がある。通常、いわゆる当業者(その分野において通常の知識を有する者)は、その技術分野に限定されるが、ソフトウェア関連発明においては、当業者がハードウェア資源とソフトウェア処理の両方の分野の知識を有する者と想定された上で、進歩性が判断されている。(ソフトウェア発明における当業者は、複数の技術分野からの「専門家からなるチーム」として考えられている。) 参考文献「特許・実用新案 審査基準 第VII部 特定技術分野の審査基準 第1章 コンピュータ・ソフトウェア関連発明」 また、特許の審査においては、コンピュータソフトウェアにおいては、何が先行技術に属するかを的確に認識することが困難であると考えられる。なぜなら、コンピュータソフトウェアでは、それらの先行技術が特許文献の中に記載されることはあまりなく、その先行技術が、OSのマニュアル中に記載されていたり、ソースコードの中に記載されていたり、巷のプログラマのテクニック(慣用技術)等として伝わっていたりすることがあり、審査対象の文献に較べて、先行技術が偏在しているからである。そのため、各国特許庁では、コンピュータソフトウェアに関する文献の整備を図っており、米国特許商標庁では、EIC(非特許文献データベース)、日本国特許庁では CSDB(コンピュータソフトウェアデータベース)の充実を図っているとされる。 なお、平成14年8月以降は、特許法第36条第4項第2号の規定「先行技術文献情報開示制度」が設けられ、出願時に発明の先行技術を知っているのに、その先行技術を隠して出願するような(民法上の)信義則違反について、手続き上の歯止めが設けられた。
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