日本における検察官倫理規範制定への動き
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「法曹倫理」の記事における「日本における検察官倫理規範制定への動き」の解説
日本においても具体的な検察官の行為規範の制定すべきという議論がある。その主な論拠は以下のとおりである。 検察庁が組織として説明責任を果たすために必要であること 日本においては検察官業務に関する定期刊行物は「検察事務の概況」と「犯罪白書」しかなく、かついずれも検察官業務の説明責任を果たすことが目的とされてはいない。検察官の不祥事があった際に単発的に検察庁から説明文書が公開されるが、公開期間も限られ、情報提供体制として不十分である。恒常的な説明責任を果たし国民からの信頼を確保するため、検察活動において倫理的義務が果たされているか検証する枠組みが必要である。 公正な裁判の確保のため必要であること 日本における証拠開示は公判前整理手続の導入によって相当進展したが、依然として改善の余地があることが指摘されている。特に以下の点は改善が強く求められている。無罪側証拠の告知義務の欠如 開示義務違反に対する制裁の欠如 全証拠リストの開示の必要性 こうした問題点の改善のために、検察官の行為規範を具体化する必要がある。 誤判救済強化のため必要であること 検察官は組織が強固であり、検察官倫理の根本に関わるような制度改善の求めに対しても官僚的態度で議論を回避する姿勢がしばしば見られる。そのため、明文の倫理規定によって具体的な義務を定め、抜本的解決を図る必要がある。 特に、日本の再審事件においては、検察官が証拠の任意開示に応じたことで事態が進展したことが少なくない。世界標準となっている真実究明義務を倫理規定に定めることにより、再審請求事件において検察官に協力義務(誤判究明義務)を課すことができ、誤判救済機能を制度化することができる。 以上のような観点から、検察官の倫理規定においては次のような行為を禁止することが主張されている。 無罪・減刑方向の証拠の隠蔽・無視 メディアへの不適切なコメント 裁判所との一方的なコミュニケーション 相当の理由のない起訴およびその可能性の示唆 虚偽証拠の請求 代理人がいる当事者との直接接触 虚偽の陳述 証人の威迫 審判者となる可能性のある市民へ向けた不適切な陳述 正義を求めず、勝訴だけを求める行為全般
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