日本におけるドイツ語の影響
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 22:52 UTC 版)
「ドイツ語」の記事における「日本におけるドイツ語の影響」の解説
ウィクショナリーに日本語 ドイツ語由来に関するカテゴリがあります。 近代の日本は、帝政ドイツ、ヴァイマル共和政、ナチス・ドイツを通じて、ドイツから様々な影響を受けた。西洋医学を輸入する際にドイツ人教師を招いた影響もあり、多くの医学用語がドイツ語から借用され、かつてカルテはすべてドイツ語で書いていた。 1960年代(昭和30〜40年代)までは、例えば補酵素(コエンザイム)をコエンチーム、ウイルスをヴィールスなどとドイツ語式に学習されていたが、現在ではそれぞれ英語・ラテン語読みが一般化している。工学等でもドイツにならう部分は多く、鉄道用語などをはじめとして、ドイツ語発祥の用語が多く使用された。 戦前の日本の教育では英語に次ぐ重要な外国語として見なされ、たとえば旧制高校では文甲、理甲クラスが英語を、文乙、理乙クラスがドイツ語を第1外国語として、他方を第2外国語として学んだ。フランス語を第1外国語、英語を第2外国語としたのは、文丙、理丙クラスであるが、設置している高校は少なかった。 エネルギーやアレルギーなどの物理学・化学用語、パトローネ、レフなどの写真用語(カメラもドイツ語発音である)、さらにはアインザッツやタクトなどのクラシック音楽用語(音名なども、ドイツ語名(アー、ベー、ツェー..)を使う人が多い)、ピッケル、リュックサック、ザイル、ツェルト、シュラフ、ヒュッテのような登山・山岳用語、プルークボーゲン、ゲレンデ、ストック等のスキー用語などにも使われている。これらはいずれもドイツあるいはオーストリアで盛んだったものを日本に移入した結果である。例えば、クラシック音楽はドイツ・オーストリアからJ.Sバッハ、モーツァルト、ベートーヴェンといった著名な作曲家・演奏家が輩出し、クラシック音楽の中心とされてきたことによる。ベートーヴェンの歓喜の歌は、日本でもドイツ語で歌われることが多い。また、日本にスキーを紹介したのはオーストリア・ハンガリー帝国の軍人のレルヒ少佐である。 また、昔の政治や社会運動に関係する用語にはドイツ語に由来するものが多かった(パルタイ、ブント、ケルン、ゲバルト、内ゲバ、フューラー等)。これは当時の日本の左翼思想に影響を与えたマルクス主義のマルクスやエンゲルスの原著や、マルクス等に影響を与えたヘーゲルをはじめとするドイツ観念論やヘーゲル左派などのドイツ系の哲学の原著、右翼思想に影響を与えたアドルフ・ヒトラー『我が闘争』などナチズムの原著がドイツ語で記述されていたことの影響である。 その他、ドイツ語に由来する日本語には以下のようなものがある。 アルバイト グミ(元々はゴムを意味する) ゼッケン テーゼ メルヘン コンメンタール ゲネプロ(「ゲネラルプローベ」("Generalprobe")が省略されたもの) ワクチン、カメラなども英語(ヴァクシン、キャメラ)ではなくドイツ語の発音に則して用いられている言葉である。 日本語で用いられているドイツ語由来の語は必ずしも本来の意味を正しく反映していない、あるいは幾つかある意味のうち一つのみが用いられていることがあるので、ドイツ語を話すもしくは学ぶ際には注意が必要である。
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