文化進化のメカニズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/25 14:52 UTC 版)
「二重相続理論」の記事における「文化進化のメカニズム」の解説
DITでは文化の進化と持続は五つの主要なメカニズム(文化的なバリエーションへの自然選択、ランダムなバリエーション、文化的浮動、ガイドされたバリエーション、伝達バイアス)で説明される。 文化的変異への自然選択個人間の文化のバリエーション(文化的変異)は個人間の成功率の差異を生み出す。そのために特定の文化的変異は他の人々に採用されやすくなる。この選択的なプロセスは伝達バイアスにも関連しており、各々の環境に適応した行動、習慣を生み出すことがある。 ランダムな文化的変異ランダムな文化的変異は文化情報を学習、提示、追想する際の間違いによって引き起こされる。 文化的浮動文化的浮動は大まかに生物学的進化における遺伝的浮動に類似している。文化的な特徴は人間集団の間で観察され、伝達されるときのランダムな偏りによってその頻度を変動させる。このような変動は文化的なバリエーションが人間集団から消える原因となるかも知れない。この効果は特に人口が少ない場合に起きやすいはずである。 ガイドされた変異文化的な特徴は個々人の学習というプロセスを通して集団に定着する。いったん、個人が新しい特徴を学べば、それは集団の他の個人へ伝達されることができる。ガイドされた文化的変異はどのような文化的な差異が学習されるかを決定する適応的な基準に依存している 。 伝達バイアス1970年代以降、文化的特徴が個人間で伝達される際のさまざまな異なる方法を理解することはDITの研究にとって重要な部分を占めていた。伝達バイアスはいくつかの文化的差異が伝えられる時、それが個人の好みに合うかどうかで差があるときに起きる。ボイドとリチャーソン(Boyd and Richerson 1985)はいくつかの起こりうる伝達バイアスを定義し、分析的にモデル化した。このリストは時間をかけ、特にHenrichとMcElreathらによって洗練された。 内容バイアス内容バイアスは文化的変異の内容自体が受け入れられやすいものかどうかによって起きる文化伝達の偏りである。内容バイアスは遺伝的な嗜好、既存の文化的嗜好、あるいはその両方によって引き起こされる。たとえば食物の好みは、糖分や脂肪を好む遺伝的な嗜好と、タブーや習慣を文化的に学習することで決まる。内容バイアスはしばしば「直接的なバイアス」と呼ばれる。 状況バイアス状況バイアスは個人がどの文化を受け入れるかを判断する際に彼らの属する集団の社会構造を考慮する際に起きる。この判断は文化的変異の内容に関係無く起きる。状況バイアスは大きく二つに分けられる。 1.モデルを基盤としたバイアス個人が特定の「文化モデル」を選ぶときの偏りがモデル基盤バイアスである。モデル基盤バイアス主に四つに分けられる。(1)名声バイアス、(2)技術バイアス、(3)成功バイアス、(4)類似性バイアスである。 名声バイアス:より多くの名声が得られそうだと考えられるときに特定の文化的変異が模倣され、受け入れられる。名声の量は他人による潜在的な文化モデルに向けられる敬意の量を表しうる。技術バイアス:異なる文化モデルが技術を行使しているのを実際に、直接に見た場合、より良く働きそうな技術は模倣され、技術バイアスは起きる。成功バイアス:技術バイアスのように特定の専門化された文化モデルではなく、より一般的に成功している文化モデルは模倣される。それが成功バイアスである。類似性バイアス:現在の文化モデルの特徴と類似した特徴を持つ文化モデルは模倣されやすい。これが類似バイアスである。 2.頻度依存バイアス集団中で認められる頻度に基づいて特定の文化的変異が選ばれるとき、頻度依存バイアスは起きる。もっともよく解明されているのは「服従バイアス」である。個人が平均的あるいは平均以上に存在する文化的変異を選ぶとき服従バイアスは起きる。もう一つは「希少さバイアス」である。個人が優先してまれな文化的変異を選ぶとき、希少さバイアスは起きる。これはしばしば「非協調的バイアス」と呼ばれる。
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