放送局の場合
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/23 05:56 UTC 版)
放送用の送信所は地域の状況により、また放送会社毎にその仕様はかなり異なる。以下、概ね共通するところについて、日本民間放送連盟編集の『放送ハンドブック』(東洋経済新報社、原著1991年5月)および『放送ハンドブック改訂版』(日経BP社、原著2007年4月)にあるところを基に述べる。 放送に割当される放送用電波(放送波)には、短波放送などを除き、その歴史的経緯や業務内容(放送対象地域が原則的に都道府県単位、いわゆる広域放送と呼ばれるものでも地方単位であるなど)から長距離伝送用の周波数は基本的に割当されない。加えて放送にはシステムの高い信頼性が求められることから、放送局(電波法施行規則第4条2)の送信所はその放送区域の割に大規模なものとなる。例えば中波ラジオ(AMラジオ)放送であれば、100kWの大電力に100mクラスの送信鉄塔(送信アンテナ)、極超短波 (UHF) を用いて実施される地上波デジタルテレビジョン(地デジ)放送では10kWの大電力に600m超えのタワー頂部に置いた送信アンテナでようやく関東地方や東京都及びその近隣を放送区域とするといった例がある。また放送は不特定多数への一方通行の情報伝達、すなわち送信のみであることから送信所は他の無線局のものよりもその規模の大小を問わず、概してはっきりしたものとなっている。これがいわゆるコミュニティFMや中継局になると、初級のアマチュア無線局の上限と同じ10~20W程度で運営されている社が多い。 なお放送の場合、上述、通信所にあたるところが演奏所になる。 放送局の送信所(放送所といわれることもある)では、演奏所からの映像・音声信号を無線あるいは有線回線によって受け取り、送信装置を用いて電波としてアンテナから輻射する。なお放送波の送信に用いる送信装置のことを特に放送機(英語: broadcast transmitter)と呼ぶことが多い。 日本の地上波放送会社はテレビジョン、ラジオともに一般に放送対象地域の多くを放送区域とする親局(本局などともいう)と、地形的条件などにより親局でカバーしきれない放送対象地域内の地域にサービスを行う中継局(中継放送局、中継放送所などともいう)を持ち、放送対象地域全域を放送系としてカバーしている。すなわち親局、中継局ともに送信所ではあるが、概ね大規模な送信設備を持つところを送信所、これ以外を中継局と呼び分けていることが多い。中継局は送信所としての機能を持つが、入力となる回線に違いが見られ、親局と比較して概して小規模である。 なお、放送対象地域が法令により狭く限定されるコミュニティFMでは、小規模なアマチュア局程度の設備で十分となることが多く、送信所と演奏所を併設している例が多い。 AMラジオ放送用の送信所などを除き、その多くは放送区域を見通せる山上に設置されるが、東京タワー、東京スカイツリー、名古屋テレビ塔、東山タワー、瀬戸デジタルタワー、福岡タワーのように平野部の市街地に数百m高の塔を建設、その頂部にアンテナを配して設置する場合もある。送信所は放送会社単独で所有する場合もあれば、複数の放送会社で共同所有する場合もある。 AMラジオの送信所は各局の親局を中心に広大な敷地を必要とするが、空いた敷地を使いメガソーラーを設置する例もある。MBSラジオが初めて設置した。
※この「放送局の場合」の解説は、「送信所」の解説の一部です。
「放送局の場合」を含む「送信所」の記事については、「送信所」の概要を参照ください。
- 放送局の場合のページへのリンク